大谷ノブ彦のキスころ

松坂大輔、夏の甲子園・準決勝でテーピング外しの真相

ダイノジ・大谷ノブ彦が、成績も人気も低迷する中日ドラゴンズに言いたいことをぶちまけ、リスナーと共に改善案を模索しながら、最後はみんなひとつになって応援していこうという、3時間の特番『大谷ノブ彦のキスドラ』。

5/3の放送では、ゲストの若狭敬一CBCアナウンサーと松坂大輔談義で盛り上がりました。

[この番組の画像一覧を見る]

ダイスケ、野球ダイスキ!

4月30日(月)、ナゴヤドームの中日ドラゴンズ対横浜DeNAベイスターズ戦にて松坂大輔投手が日本では約12年ぶりとなる復活勝利を挙げました
この時ラジオで実況を担当していたのが若狭アナです。この日は球場内に、選手やファンの「松坂を勝たせてあげたい」という気持ちがあふれ、異様な空気が漂っていました。

若狭アナが語ります。

「試合の後、ベイスターズの選手が『いつものナゴヤドームと雰囲気が違った』と証言しています。それにベイスターズファンが、松坂投手のヒーローインタビューを聞くまで席を動かなかったと。これは凄いなと思うんですよね。
その前の登板の、7回123球という熱投があった阪神戦でも、タイガースファンも拍手していました。やはりもはや、ドラゴンズのものではなく、プロ野球界の松坂大輔なんだなというのを実感しましたね」

昨年、あまりにも投げられる目処が立たないため、打者転向を本気で考えて打撃練習をしていたという松坂投手。スポーツ紙でその記事を読んだ大谷は「引退じゃないんだ」と驚きました。よっぽど野球が好きなんだなと。

「ボロボロになるまで野球をやりたい」と松坂投手が言っていたのを、若狭アナも思い返します。
「ダイスケ、野球ダイスキ!」と大谷も感嘆の声をあげるのでした。

一瞬で空気を変えた準決勝

若狭アナが続けます。

「凄いなと思ったのが、好きなだけではなくて、野球のことをよく考えていて。勝った時も、5回ツーアウト満塁から、宮崎選手に押し出しのフォアボールを与えてしまったんですけれども。
『大量失点を避けるのは、押し出しなんじゃないかと、マウンドで思っていた』と。こんな発想無いですよ!」

この強固なメンタルを、四球から崩れていく投手陣や、無死満塁のチャンスをガチガチになってモノにできない野手陣に見習ってほしいものです。
ただ、「松坂投手は高校時代から数々の修羅場をくぐり抜けてきた経験があるからできるのであって、他の選手がマネするのは難しい」とも、若狭アナは分析します。

いや、そうとも限らないぞとばかりに、大谷が語ります。

「野球が本当に大好きで、『野球とはそういうもんだから』というのが松坂投手の根底にあるんじゃないかと。僕が忘れられないのは、甲子園の準決勝」

1998年、夏の甲子園大会。準々決勝でPL学園と横浜高校が延長17回を戦い抜き、松坂投手は250球で完投しました。

そして迎えた翌日の準決勝、明徳義塾対横浜。さすがに松坂投手は登板できないため、右腕にテーピングをして左翼手として出場させます。が、登板した2年生の投手2人とも打ち込まれ、8回表終了時点で6-0と明徳義塾が大量リード。万事休すと思われましたが・・・。

大谷「今でも覚えています。松坂がピッチング練習を始めた瞬間に、テレビ越しに空気が変わったのがわかるという。あの、テーピングを取る姿で場内がどよめいているんですよ。そしたら、横浜が逆転するっていう」

8回裏、横浜の攻撃中。松坂選手がテーピングを外して投球練習をすると、明徳義塾の選手がミスを重ねるなどして一挙4点が入ります。
9回表、いよいよ松坂投手が登板し、打者3人で抑え、その裏に3点を奪い逆転サヨナラ勝利となったのでした。

お前なら大丈夫だから!

大谷が続けます。

「あの、場を支配する力。野球を好きで信じてたら、流れをコントロールできるんじゃないかと思って」

例えば無死満塁で打席が回って来た時、本当に野球が好きなら、プレッシャーに感じるのではなく「ここで打席に立てるなんて、こんな幸せなことってない」と思うハズだということです。

大谷「だってもう、福田永将選手なんて、緊張のあまり瞬きが石原慎太郎レベルで激しくなって(笑)」

若狭アナ「あれでおそらく、七輪の火を起こせます」

大谷「パタパタパタって(笑)。あと、独特の呼吸法で激しくスーハースーハー」

若狭アナ「あれ、おそらく1人産まれる感じですよ」

ラマーズ法じゃないんですから。

大谷「見てるこっちが不安になってしょうがないんですよ。『福田、大丈夫だから!お前の技術なら打てるから!』って言いたくなる」

経験も必要でしょうが、ピンチをチャンスに変える・チャンスをピンチにしないのは、やはり気の持ちようじゃないかと言う大谷でした。

甲子園の魔物は偶然の産物

松坂投手の、甲子園の空気を変えたテーピング外し。実は本人に空気を変えようという意図は無かったそうです。

松坂投手と横浜高校でバッテリーを組んでいた小山良男捕手。後にドラゴンズに入団し、現在は編成担当としてスタッフにいます。
高校野球が大好きな若狭アナは、詳細をどうしても聞きたくて、小山さんに確かめてみたと言います。

「あのテーピング外しって、空気を変えるための、渡辺元智監督や小倉清一郎部長の演出でしょう?」

小山さんの答えです。

「いえ、アレは違うんです。僕が主将として、8回辺りで円陣を組んだんです。『PL学園に申し訳ないから、1点ぐらい取ろうぜ』って」

前日歴史的な死闘を繰り広げたPL学園に対して、このまま6-0で負けてしまったら申し訳ないと。
こう言った時に、松坂選手がブルペンに駆けて行ったそうです。「どうせ負けるんなら俺、1イニングぐらい投げるよ」と。せめて戦う姿勢を見せようと。

そしてテーピングを剥がし始めたら、アルプススタンドどころか甲子園全体が「ウワアァァァァァーッ!」という空気に。

若狭アナ「すると、明徳義塾のナインが浮き足立つという。勝てる大チャンスが、急に大ピンチになるという。ノーアウト満塁の中日打線状態になっちゃったっていう」

つまり、今のドラゴンズはあの時の明徳義塾と同じだということです。

若狭アナ「周りの雰囲気が図らずも変わっていく状況に、やはり10代の高校生なら飲み込まれていくんだなあと、小山さんはあの試合で感じたらしいです」

「やはり松坂投手って、野球の神様に選ばれている・見捨てられていない」と思う、大谷と若狭アナなのでした。
 

まさしく平成の怪物

若狭アナは、松坂投手が勝った時のために、実況コメントをあらかじめノートに書き込んでいたそうです。
全国が注目する瞬間ですから、何度も聞くことになる、一生残るシーンになります。

「普通は実況アナウンサーとして、そのまま目に飛び込んできたものを臨場感と共にお伝えするものなんですけど、そのメンタルの強さは無くて。これだけ言おうと思って書いておいたんです。『2018年4月30日、松坂大輔が甦りました』。
私、この瞬間はグラウンドを全く見ておらず、手元のノートを見ておりました。最低なアナウンサーです」

そう自虐的に語る若狭アナ。まあ、それでも噛まずにちゃんと言えたからいいのですが、ただ1つ悔やまれることがありました。

「勝った4月30日は、平成がちょうど残り1年になる日なんですよ。『平成残りちょうど1年になるこの日に、平成の怪物の新たな物語が始まる!』って、なぜ思い付かなかったんだと。ナゴヤドームからCBCに帰ってきて気付きました…」

この嘆きに大谷も共感します。

「昔、AIR(エアー)さんっていう、すごいギターの上手いロック歌手がいたんですよ。僕が初めてDJをやった時、飛び入りしてくれて。それで、AIRさんがエア・ギターをやってくれたんですよ。『これが本当のAIRギター』というフレーズが出てこなかった。言えば絶対にウケたのに、ステージを降りるまで気が付かなかった。10年経った今も引きずっています(苦笑)」

若狭アナも危うく引きずるところでしたが、「ただ1つ良かったのは、ここで言えたこと」と、何とか自己完結できたようです。
(岡戸孝宏)
大谷ノブ彦のキスころ
この記事をで聴く

2018年05月03日20時03分~抜粋

関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報