大谷ノブ彦のキスころ

ミスチル桜井和寿×ダイノジ大谷ノブ彦 夢の対談(中編・曲作りの極意)

ダイノジ・大谷ノブ彦が音楽、映画、名古屋のグルメ、和菓子、中日ドラゴンズなど、好きなものをアツく語る番組『大谷ノブ彦のキスころ』。

12/10の放送では、Mr.Childrenのボーカル、桜井和寿さんがゲスト出演しました。
「前編」は桜井さんと大谷との出会いが中心でしたが、この「中編」ではミスチルの曲作りについてお送りします。

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バランスがいい構成


前編は、ギターの田原健一さんが割とリーダーシップを取るタイプだという話で終わりました。

実際のミスチルのリーダーは、ドラムスの鈴木英哉(愛称・JEN)さんです。ちなみに桜井さんは、リーダーというのが苦手で、なりたくないのだそう。

ベースの中川敬輔さんを含め、ミスチルの4人は絶妙なバランスを保っていると大谷は語ります。

「JENさんなんて、絶対いないとダメですよね。あんな明るいムードメーカーいないし」

うなずく桜井さん。

大谷「俺、酔っぱらって、1回LINEで『トークライブやりません?』とJENさんに伝えたんですよ。あの人ならできるんじゃないかなと思って(笑)」
桜井さん「けどね、ムッチャクチャになりますよ。あいつ言ってることよく分かんなくなっちゃうから(笑)」

12/20にリリースされる、ライブ&ドキュメンタリーDVD・ブルーレイ『Mr.Children、ヒカリノアトリエで虹の絵を描く』には、そんなミスチルのメンバーの素顔が垣間見えます。ぜひチェックしてみてください。

大谷イチオシの曲


ここで、ミスチルファン以外の人に聴いてほしいというミスチルの楽曲を、桜井さんと大谷がそれぞれ選び、番組でかけることに。

まず大谷がおススメしたのが「エソラ」。2008年発売のアルバム『SUPERMARKET FANTASY』に収録されています。
大谷はこの曲が一番好きだとずっと言い続けているそうです。

桜井さん「そうですよね。『エソラ』すごく評価してくれてますよね」

大谷「こないだのドームツアーでも一番いい所でやってましたよね。あれ、僕を意識してんじゃないかなって」

桜井さん「アッハッハッハッハ!でもね、『エソラ』に対して大谷くんがそう言ってくれるから、改めて見直したところはある。それまでは、いわゆるミスチルの中でもポップな感じの曲ね、みたいに思ってたんだけど、確かに大谷くんが評価してくれるあそこの歌詞は(見直した)。ちゃんと理解して聴いてくれてんだってのも嬉しかったけど」

あそこの歌詞とは一体?


大谷「『エソラ』はまず、音楽と人生の歌だと僕は解釈したんですね。僕6月生まれで、小っちゃい時から雨が降ってることがコンプレックスで。晴れてることが正しいみたいな。『今日は雨だからテンション下がるわ~』と学校でもそういうこと言うヤツがいるんですよ」

それでネガティブ思考になり、「大谷って、大きな谷底ってことだよなあ」「俺って太陽じゃなくて月側の人間なんだなあ」などと考えるように。

そんな中、1994年6月に「innocent world」が発売されます。

大谷「これが6月の雨の歌で。しかも俺の誕生日の近くに発売して。『この人、俺に向かって歌ってんだ』みたいな(笑)」

「雨もいつか止むだろう」という歌が多い中、ミスチルの曲には「雨も人生には絶対必要だ」というような描写がよくあるんだと。それを踏まえた上で人生に希望を見出すみたいな感じが、“桜井節”にはあるんだと。
「エソラ」はまさにその真骨頂だと、大谷は力説します。

特に最高だという歌詞が2番のサビ。歌詞はここでは載せられないのでざっくり言うと「~為に」と繰り返す部分です。
ここがまさに、音楽と人生を表しているというのです。

大谷「音楽を僕らが聴く理由。嬉しくて楽しかったことを忘れないために、曲を聴いてその記憶を想起する。
逆に、ツラくて悲しいことを記憶から消すために、曲を聴く。音楽の2つの側面をたった2行で表している。
ジーニアス!天才!」

もう大興奮です。この思いを何度もぶつけられ、桜井さんは歌詞を見直したのでした。

深読みならぬ深聴き


ちなみにこの「エソラ」、曲が先にできていて、ギリギリまで歌詞はサビの英語部分しかできてなかったとか。
その状態からあれほどの歌詞ができたことに驚嘆する大谷。

桜井さん「でもね、この曲があったからこのアレンジがあったから、この言葉が引き出されたってのがあるので。
メロディがあって、アレンジがあって、最初は歌詞がないんですよ。その音楽を、言葉でより実像化していくために、歌詞を書いてるので。メロディが無ければ僕は歌詞も書けないし。
そのメロディが何を訴えているのかっていうのを、解読する」

自分が作ったメロディなのに、まるで他人が作ったみたいな感じで向き合うんだそう。

さらに大谷は「エソラ」の2番で、雨に濡れる様子を書いた歌詞も絶賛します。

「濡れるのをわかっているけど外に出て行って、いつか雨が止むのを願うっていう生き方なんですよ、この歌の主人公は。それを他の人はまさに"絵空事"と笑うだろうけどっていう、この(騎士の)ドン・キホーテ感がもうたまんないっすよ!」

桜井さん「そこまで深く聴いてる人いるのかなあ(笑)。でもそれが嬉しいんですよね」

桜井さんイチオシの曲


今度は、桜井さんがおススメするミスチルナンバー、「ロードムービー」です。2000年発売のアルバム『Q』に収録。

桜井さんが語ります。

「自分が一番好きな歌詞ですね。よく書けたなっていうフレーズがあるんですよ。でもね、これあんまり『この歌詞いいです』って聞いたことないんですね。だから自分から言っていかないと。この歌詞の良さがわかんないんじゃないかなと思って」

「オートバイに乗ってる男女の物語なんですが、問題が何かしらあるんですよ。
それは具体的には歌詞では説明してないんですが、問題がいくつかある。それはまあ、聴いてる人に想像してもらいたいんだけど」

歌詞には、カラスが飛び交ったり、白黒の虹が架かったりする夢の描写が出てきます。

「悪い暗示の夢を見るっていうことは、心の中に何か闇を抱えてるってことだから。『僕らは闇を抱えてる』とは書かないけど」

直接的な表現は避けているわけです。
で、自画自賛したいフレーズは?
それは、最後の4行「街灯が~未来へ」のところ。サビの後に来るAメロ部分です。

桜井さんが続けます。

「問題は何も解決しない。ただ2人は今日もオートバイに乗って夜の道を走っていくんだけれども、その等間隔で置かれた街灯っていうのは、ただの次の街灯ではなくて、2秒後の未来なんですよ。照らされてるものは2秒後の未来。つーことは、闇があったら必ず次の未来が2秒後にやってくる。それが快感なの。なぜならこの2人には問題があるから。
自分の問題は解決しないんだけど、街灯があることで、なんつーの、代理だよね」

つまり街灯は、何かが変わるんじゃないかという、どん底の中にある希望なのです。

「これホントもう天才かと思った!これを書いた時には。でもあんまり評価されてない(苦笑)」

ちなみにミスチルのシングル曲は、歌詞のないメロディ・アレンジができた段階で決まるんだとか。なので、良い歌詞ができたからと言ってシングルにはなかなかならないんだそう。

皆さんもぜひロードムービーの歌詞を褒めてあげて、桜井さんに快楽の未来を贈りましょう。
(岡戸孝宏)

大谷ノブ彦のキスころ
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2017年12月10日13時25分~抜粋

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