お笑いトリオのパンサーから、ツッコミ担当の向井慧さん(31歳)が9/10『大谷ノブ彦のキスころ』に出演しました。
向井さんは名古屋市熱田区出身。江戸川乱歩や杉原千畝らを輩出した歴史ある瑞陵高校に通っていた、生粋の名古屋人です。
なぜ彼がゲストに?パーソナリティーのダイノジ・大谷ノブ彦と同じ、明治大学政経学部経済学科出身だから?
いいえ、向井さんは『キスころ』を聴いて育ったからなんです。
大谷ノブ彦のキスころ
パンサー向井とダイノジと海砂利水魚とナイナイと極楽とんぼとラジオ愛と
海砂利水魚(くりぃむしちゅー)伝説
厳密に言うと、まず2001年10月~2002年9月の水曜深夜にCBCラジオで放送されていた『ダイノジのタングショー』から始まり、2002年4月~2004年3月に“ハイパーナイト”という枠組みの中で放送された『ダイノジのキスで殺してくれないか』に至るまでの一連のダイノジの番組を、当時高校生だった向井さんは聴いていたのでした。
さらに現在でもこの『キスころ』をネットを使って聴いているという、いわゆる"ヘビーリスナー"なのです。
もっと厳密に言っちゃいましょう。
遡って1999年10月~2000年9月。月~金の22~25時までCBCラジオで放送されていた『本気汗(まじる)』という夜ワイド番組がありました。
日替わりパーソナリティーで、水曜日はお笑いコンビ・海砂利水魚が担当していました。現在のくりぃむしちゅーです。当時中学生だった向井少年は、この番組から聴いていたそうです。
そして『本気汗』終了後、『タングショー』という新番組がスタート。放送時間は大幅に短縮されましたが、引き続き水曜は海砂利が担当。
しかし1年後の2001年9月、惜しまれながら海砂利が番組を卒業。代わってダイノジがパーソナリティーを務めることになったのでした。
その時は番組に海砂利ファンから抗議のおたよりが殺到したと、当時を振り返る大谷。
しかし大谷もその気持ちが理解できます。なぜならダイノジの2人は素人時代から、海砂利水魚に心酔していたからです。
海砂利水魚の弟子になりたかった
「まだ長いネタを作れなかった頃、海砂利さんのネタをコピーして練習してた」
「俺らダイノジは九州(大分)で、海砂利さんも熊本出身。当時お笑いと言えば関西系か、東京のオシャレなコント。そのどっちでもないし、内村充良さん以来の九州発で、全く見たことない感じの。言葉もすごく先鋭的で。上田晋也さんへの憧れが半端なかったね。例えツッコミは革命ですよ」
「俺らデビューした頃、海砂利さんに弟子入りしたかったの。相方の大地洋輔が『今日こそは(弟子入り志願に)行こうよ、大谷さん』とずっと言ってて。『このまま吉本興業にいても使えないだろうし、芸人を諦めるなら最後は好きな人のそばにいたい』って」
「まだ『ボキャブラ天国』(フジテレビ)に出る前の海砂利さんって、(大谷の母校の)明治大学で練習してたのよ。早稲田(上田)と立教(有田哲平)なんだけど、住んでるのが多分その近くで。当時の事務所が幡ヶ谷にあって。2人が明大に入っていくのを見て、お笑いファンの子と話したら『あそこで練習してるらしい』って聞いて。俺らもゲン担ぎで明大の中で練習してた」
大谷の口から出るわ出るわ、海砂利大好きエピソード。更にこんなマニアックな話も。
「90年代の若手のライブって、審査員が3人くらいいて、お笑いライターとかいるのよ。結構ズケズケ批評して。で、一番有名な人が『左(上田)はもう完成してる。お前はいつでも売れるから。問題は右(有田)なんだよなあ。わかるだろ?』って言って。
その時の有田さんは今みたいなキャラじゃなく、学天即のボケの子(四条和也)みたいな、無口な感じ。上田さんにボケを言わされてるみたいな。
今の有田さんの『いやいやいやいや~』みたいなノリは、ボキャブラ出演以来、アンタッチャブルのザキヤマさん(山崎弘也)と遊びだしてできたのよ」
ナインティナイン伝説
中高生時代はCBCラジオで海砂利水魚、ダイノジ、それにブレイク前のブラックマヨネーズの番組を楽しんでいたという向井さん。では、そのお笑い&ラジオ好きのルーツは何なのでしょう?
「『めちゃイケ』(フジテレビ)の“オファーがきましたシリーズ”を見て、『芸人って面白いだけじゃなくてカッコいい』って思って。僕がお笑いを目指すキッカケは、ネタじゃなかったんです」
向井少年が12歳になる頃、ダイノジがデビューして3年目、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(同)が終了を迎えた1997年。
『めちゃイケ』で、ナインティナイン・岡村隆史がある事に挑戦する姿をドキュメンタリー風に放送する企画がスタートしました。その第1弾が「ジャニーズJr.としてSMAPのコンサートに出演」。
笑いの要素は入れつつも、岡村が真剣にダンスに打ち込む様子を延々と流すと言う、それまでのバラエティには無い演出に向井少年は心を奪われました。
その放送の翌日、銀座7丁目劇場の楽屋ではその話題で持ちきりだったと語る大谷。
「やべえ!ダウンタウン松本さんとは全然違う、動きで笑いを取る時代が来た!」
「アイドルが面白いと初めて思った。中居さんのリアクションに声出して笑った」
…などなど、プロすら衝撃を受ける伝説回でした。
それからナイナイの大ファンとなった向井少年、ある時『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)の存在を知ります。そこには、下ネタや毒舌を吐きコアな世界を繰り広げる、テレビとは全く違うナイナイが。
それ以来ラジオの魅力にとりつかれ、芸人のラジオを手当たり次第聴くようになったとか。
極楽とんぼ伝説
現在AbemaTVで、10年ぶりに復活した極楽とんぼ(加藤浩次、山本圭壱)の番組に、レギュラー出演している向井さん。
そのキッカケは奇跡的だったそうです。
「ルミネtheよしもと」という劇場で地道にネタ披露をしている極楽とんぼ。ある日向井さんは劇場帰りのエレベーターに、加藤浩次と偶然乗り合わせました。ほぼ会話したことが無く緊張している向井さんに、加藤がボソッと一言「『ブランチ』ってお前、どうなったの?」
TBSテレビで土曜朝から放送されている、人気情報バラエティ番組『王様のブランチ』。パンサーもレギュラー出演していましたが、昨年卒業しました。
それを知った加藤は「そうか…。でも、お前らにもうちょいやらせても良かったけどなあ」という、心をくすぐる言葉をかけました。まずこれがニクイ。
礼を言いつつ別れた向井さん。実はその後加藤は、AbemaTVの番組立ち上げ会議に行きます。
そこで誰かアシスタントを入れたいという話になり、加藤が「向井とかいいんじゃねえか?」と提案。それで決まったんだそうです。
たまたま居合わせた若手の実情を知って、すぐ助け舟を出す加藤の男気エピソード。
ちょっと共演しただけの2丁拳銃の小堀に、子どもが生まれた事を報告されると、山本と共に10万円ずつ渡し「これお前にあげるんじゃねーぞ。子どもにあげるんだからな」と言った話。
久々の単独ライブをやる時、末端の放送作家に「力貸してくれよ」と頭を下げた話。
モスバーガーのフィッシュバーガーとクラムチャウダーを2個ずつという偏ったメニューを、1人で食べてた話。
最後は男気とは関係ないですけど。そんなお笑い伝説を楽しく話す大谷と向井さんでした。
(岡戸孝宏)
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