多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

尾八原ジュージ『みんなこわい話が大すき』

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★内容紹介
・物語の始まりは小学校。転校生のひかりはクラスの女王様的存在であるありさに目をつけられいじめられるように。母親は離婚したばかりで精神が不安定で、ひかりにも辛くあたる。そんなひかりの唯一の慰めは、彼女の部屋の押し入れにいる、黒い影のような、形も声もないなにかよくわからない存在。彼女はそれに「ナイナイ」と名をつけ、話しかけていた。そんな「ナイナイ」を、ひかりは深く考えずにありさに会わせる。すると翌日から、それまでひかりをいじめていたありさが、まるでひかりを親友のように扱い始め、周囲も急にひかりをちやほやするようになった。母親まで態度が変わってひかりを可愛がる。この急激な変化はいったい何だ?時期を同じくして押し入れから「ナイナイ」が消えてしまったこともあり、不気味に思うひかりだったが、彼女は学校でどんどん人気者になっていく。
・第二章はがらりと場面が変わって、霊能者の事務所が舞台。志朗という霊能者のもとに、若い女性の依頼者がやってくる。姉が幼い息子とともに心中してしまったが、その理由がわからない。真相を知りたいという依頼だったが、志朗は依頼者と会うや否や、自分には手に追えないと追い返してしまう。どうやら志朗には何かが「見えた」らしいのだが……。
・この学校でのひかりの一件と、志朗に依頼された母子心中事件が思わぬ形で絡み合う。いったい、ひかりに何が起きたのか。それが母子心中事件とどう関係しているのか。
★読みどころ1)ホラー小説だが、ホラーが苦手な人も大丈夫
「ナイナイ」というのは(正体は言えないが)人智を超えたもので、その背後にはある呪いがある。そういう意味ではホラーだが、むしろ物語は「何が起きているのか」というミステリの趣向が強い。さらに、霊能者の志朗と、そのボディガードの青年のコンビの会話がとてもコミカルなため、怪談が苦手な人でも読める。その呪いを倒すゴーストバスターズ小説、という雰囲気。
★読みどころ2)といっても、まったく怖くないわけではない
いわゆる怪談の怖さではないが、「いじめが急に止まって、逆に超人気者になる」という事態はただいじめがなくなってよかったね、というだけにとどまらない不気味さがある。ひかりをいじめていたありさはお金持ちの子で私立中学を受験するつもりだったが、ひかりと一緒にいたいからという理由で公立中学に進み、家族もそれを快く受け入れる。中学でもひかりはまるでお姫様のように周囲から扱われる。両親の離婚は父親の浮気で、父親はその浮気相手と再婚していたが、いつのまにか戻ってきて両親揃ってひかりを可愛がる。この状態がすでにめちゃくちゃ怖い。幽霊とかの具体的な恐怖より、何が起きているかわからない恐怖、そしてその背後にあるものは決していいものではなさそうという恐怖の演出が上手い。
★読みどころ3)畳み掛けるような終盤の展開
ひかりの一件と母子心中事件の関係が判明し、その背後にある呪いの正体がわかってからは霊能者・志朗がどうそれを倒すのかというバトルものへ焦点が移る。ここにも、新たにわかる真相などがあって読者を飽きさせない。そして物語が進むにつれて明らかになるのは、本当に怖いものは何か、というテーマ。それはぜひ読んで感じて欲しい。
・怖いのが苦手な人でも読める、怖くない、けど実はちゃんと怖いホラー・エンターテインメント。
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