★内容紹介
・「まんまこと」シリーズが始まったのは2007年。まず単行本で刊行され、だいたい3年後に文庫になる。現在単行本では9巻まで出ており、第8巻の文庫がきのう発売。
・舞台は江戸時代、主人公は町名主の嫡男である高橋麻之助。町名主というのは、町の行政を担当する役人のこと。町を統括するのは武士である町奉行や与力たちだが、その下に、町人から町年寄という代表が任命され、さらにその下に、町ごとに町名主が決められる。今でいう町長、あるいは町内会長のようなもので、幕府からのお触れを町内に伝達したり、町内で起きた捨て子や行き倒れの面倒をみたり、祭りの時にはお金を集めたり、町人の裁判に付き添ったり、戸籍を管理したりと、事務職の公務員のような仕事。もちろんれっきとしたお役目で、他の仕事に就くことは許されず、町から給料をもらっているし、お役目は世襲制。
・そんな町名主の大事な仕事のひとつに、町内の揉め事の解決がある。重大な犯罪ならもちろん奉行所の裁きに任せるが、そこまでではない内輪の揉め事、夫婦喧嘩だったり相続問題だったり、あるいは犬が迷子になったとか、そういう厄介ごとが町名主のところに持ち込まれる。町名主は麻之助の父親だが、後継としての訓練もあり、またはあまりにしょうもない揉め事の時などに、麻之助が駆り出される。この麻之助、町内でも評判の極楽とんぼで、どうにも頼りない。ところが揉め事を前にすると、困ったねえと言いながら意外な方法で、いつの間にか解決してしまう。
・このシリーズは、そんな麻之助と彼の親友2人を中心に進んでいく。親友の一人は、隣の町の町名主の嫡男で八木清十郎。めっちゃ美男でナンパのモテ男。もうひとりは同心の家に養子に入り、今は同心見習いをしている真面目一徹の相馬吉五郎。麻之助を含めた、この後継三人組が、毎回色々な厄介ごとに当たっていくというシリーズ。
★読みどころ1)時の流れと変化
一巻ごとに5~6作の短編が入っている形で、毎回なんらかの厄介ごとが描かれる。その厄介ごとを麻之助たちがどう解決するかというのが話の中心だが、巻を重ねるうちに彼らに変化があるのが面白い。1巻で初登場したときの三人は22歳で、三人組でわいわいと事件を解決していく青春小説的捕物帳という感じだった。しかし2巻で、麻之助は結婚。また、清十郎は父親が亡くなって、早くも町名主を継ぐことになる。3巻では麻之助の妻が出産のとき赤ん坊ともども亡くなってしまう。4巻は、その悲しみから麻之助が少しずつ立ち直っていく様子が描かれる。5巻では清十郎が結婚し、6巻では吉五郎に問題が持ち上がる。麻之助にも少しずつ再婚の話が舞い込み始める。7巻では、江戸に大きな災害が起きる。どの巻でも、麻之助・清十郎・吉五郎がさまざまな事件を解決するという一話完結の話が複数入っているが、結婚したり、親の後を継いだり、家族の死があったり、新しい出会いがあったり、別れがあったり、少しずつ彼らの環境が変わっていく。それにつれて、事件への向き合い方も変わってくる。これは一話完結の短編集であるとともに三人組の大河小説でもある。
★読みどころ2)バラエティに富んだ個々の物語
さらに、それぞれの巻に入っている短編が実にバラエティに富んでいて、家族の内輪揉めからご近所付き合いのトラブル、詐欺といった犯罪もある。そのひとつひとつに、当時の江戸の生活や風習、文化、価値観などが細やかに描写され、時代小説としての読みごたえ抜群。
・三人組の成長と変化から眼が離せないシリーズ。
畠中恵『まんまこと』シリーズ
8作目の文庫最新刊『いわいごと』は文春文庫から836円で販売中です。
・「まんまこと」シリーズが始まったのは2007年。まず単行本で刊行され、だいたい3年後に文庫になる。現在単行本では9巻まで出ており、第8巻の文庫がきのう発売。
・舞台は江戸時代、主人公は町名主の嫡男である高橋麻之助。町名主というのは、町の行政を担当する役人のこと。町を統括するのは武士である町奉行や与力たちだが、その下に、町人から町年寄という代表が任命され、さらにその下に、町ごとに町名主が決められる。今でいう町長、あるいは町内会長のようなもので、幕府からのお触れを町内に伝達したり、町内で起きた捨て子や行き倒れの面倒をみたり、祭りの時にはお金を集めたり、町人の裁判に付き添ったり、戸籍を管理したりと、事務職の公務員のような仕事。もちろんれっきとしたお役目で、他の仕事に就くことは許されず、町から給料をもらっているし、お役目は世襲制。
・そんな町名主の大事な仕事のひとつに、町内の揉め事の解決がある。重大な犯罪ならもちろん奉行所の裁きに任せるが、そこまでではない内輪の揉め事、夫婦喧嘩だったり相続問題だったり、あるいは犬が迷子になったとか、そういう厄介ごとが町名主のところに持ち込まれる。町名主は麻之助の父親だが、後継としての訓練もあり、またはあまりにしょうもない揉め事の時などに、麻之助が駆り出される。この麻之助、町内でも評判の極楽とんぼで、どうにも頼りない。ところが揉め事を前にすると、困ったねえと言いながら意外な方法で、いつの間にか解決してしまう。
・このシリーズは、そんな麻之助と彼の親友2人を中心に進んでいく。親友の一人は、隣の町の町名主の嫡男で八木清十郎。めっちゃ美男でナンパのモテ男。もうひとりは同心の家に養子に入り、今は同心見習いをしている真面目一徹の相馬吉五郎。麻之助を含めた、この後継三人組が、毎回色々な厄介ごとに当たっていくというシリーズ。
★読みどころ1)時の流れと変化
一巻ごとに5~6作の短編が入っている形で、毎回なんらかの厄介ごとが描かれる。その厄介ごとを麻之助たちがどう解決するかというのが話の中心だが、巻を重ねるうちに彼らに変化があるのが面白い。1巻で初登場したときの三人は22歳で、三人組でわいわいと事件を解決していく青春小説的捕物帳という感じだった。しかし2巻で、麻之助は結婚。また、清十郎は父親が亡くなって、早くも町名主を継ぐことになる。3巻では麻之助の妻が出産のとき赤ん坊ともども亡くなってしまう。4巻は、その悲しみから麻之助が少しずつ立ち直っていく様子が描かれる。5巻では清十郎が結婚し、6巻では吉五郎に問題が持ち上がる。麻之助にも少しずつ再婚の話が舞い込み始める。7巻では、江戸に大きな災害が起きる。どの巻でも、麻之助・清十郎・吉五郎がさまざまな事件を解決するという一話完結の話が複数入っているが、結婚したり、親の後を継いだり、家族の死があったり、新しい出会いがあったり、別れがあったり、少しずつ彼らの環境が変わっていく。それにつれて、事件への向き合い方も変わってくる。これは一話完結の短編集であるとともに三人組の大河小説でもある。
★読みどころ2)バラエティに富んだ個々の物語
さらに、それぞれの巻に入っている短編が実にバラエティに富んでいて、家族の内輪揉めからご近所付き合いのトラブル、詐欺といった犯罪もある。そのひとつひとつに、当時の江戸の生活や風習、文化、価値観などが細やかに描写され、時代小説としての読みごたえ抜群。
・三人組の成長と変化から眼が離せないシリーズ。
畠中恵『まんまこと』シリーズ
8作目の文庫最新刊『いわいごと』は文春文庫から836円で販売中です。