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大矢博子・選『時代小説アンソロジー めおと』

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★内容紹介
・アンソロジーとは、あるテーマに沿っていろいろな作家さんの短編を集めたもの。今回は「夫婦」というモチーフで、時代小説を6編集めました。
・選んだ作品の作者は、青山文平・朝井まかて・浅田次郎・宇江佐真理・藤沢周平・山本一力。実績のある作家ばかりなので、内容は保証つき。6作のうち、3つが武士の夫婦、3つが町人夫婦の話。
・まずは武士夫婦の3つの物語から。
青山文平「乳付(ちつけ)」。
「乳付」とは、初産などでうまく授乳できなかったり乳がでなかったりする母親に代わって、経験のある女性が乳児に乳を含ませること。新婚の民江は、産後に体が回復せず、しばらく寝込む日々が続いた。その間に、姑が遠縁の女性に乳付を頼んだと後になって知る。その女性が若くて美しく、夫とも知り合いと聞いて自分の居場所を取られたかような不安に駆られ……。
・朝井まかて「蓬莱」
武家の四男坊である平九郎は、格上の家から婿養子に望まれる。どうしてそんな家が?と思ったが、どうやらその家の娘は奔放すぎて婿の来手がなかったらしい。そして迎えた祝言の夜、新妻は平九郎に奇妙な「三つの願い」を申し出た……。
・浅田次郎「女敵討(めがたきうち)」
主人公は江戸詰の武士、吉岡貞次郎。幕末の混乱で2年半にわたって国に帰れずにいたが、その間に、国に残した妻が浮気をしていると聞く。ばれれば不祥事なので、公になる前に国に帰って自分の手で女敵討(妻とその浮気相手を討つこと)をしようとするのだが……。
・続いて、町人夫婦の物語を3作。
宇江佐真理「夫婦茶碗」
又兵衛とおいせは再婚同士。隠居した後は街の世話役をしている。そんなふたりのもとに、夫の酒と暴力に悩む妻が逃げ込んできて……。
・藤沢周平「泣かない女」
主人公は餝(かざり)職人の道三。若い頃に憧れていた親方の娘・お柳が、夫と死別して戻ってきて、道三を誘惑する。お柳と一緒になれば次の親方は自分だし、何よりお柳は美人で、お柳と比べると自分の妻がみすぼらしく見えて仕方ない。別れを決意するが……。
・山本一力「西應寺の桜」
大店の当主・邦太郎は、妻が病に倒れたため家督を息子に譲って隠居し、看病に専念することにした。現代でいう脳出血を患った妻のため車椅子を特注し、甲斐甲斐しく世話を焼く。しかし妻の容体は次第に悪化する。いったい妻に何をしてやれるのか……。
・新婚のヤキモチから老老介護まで、浮気やDVに悩む夫婦あり、離婚の危機ありと、いろいろ取り揃えてみました。──というとけっこう深刻なテーマばかりに見えるかもしれないが、コミカルなものやじんわり染みてくるものもあり、一方でサスペンスフルなものもありと、一話ごとに目先が変わるので、どれか気に入ったものが見つけられるのでは。気に入った作品があれば、その作家さんの他の作品に手を伸ばすきっかけにもなるのがアンソロジーの魅力です。
大矢博子・選『時代小説アンソロジー めおと』
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