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友井羊『100年のレシピ』

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★内容紹介
・五篇の物語が収録されており、第一話は大学生の理央が主人公。食べることは好きだが料理が苦手の理央は、家庭的が女性が好みという彼氏に求められて作った料理に失敗し、振られてしまう。なんとかしようと有名な料理研究家の大河弘子が作った料理教室に通い始めた。そこで弘子のひ孫の翔と知り合い、友達になる。
・ところが2020年、新型コロナウィルスが蔓延。料理教室は休校、大学もリモートになり、理央は埼玉の実家に戻った。ちょうど母親が祖母の介護で福岡に戻っていたため家事は理央がすることになったのだが、ある夜、不思議な体験をする。キッチンに置いてあったお菓子や砂糖、蜂蜜などの甘いものがすべて消えており、翌朝になると元に戻っていたのだ。同居の家族は父と弟、そして父方の祖母。この不思議な出来事を翔に伝えると、99歳で存命の曽祖母、料理研究家の大河弘子なら謎を解いてくれるという。弘子はリモートで理央から話を聞くと、たちどころに真相を見抜いた。
・物語はここから時を遡り、2004年、1985年、1965年、1947年を舞台に、料理研究家・大河弘子の人生が、それぞれの時代の事件の謎解きとともに綴られる。
★読みどころ1)各時代の描写
第一話は2020年の話で、コロナ禍が主人公の生活にも事件にもからんできた。
第二話はバブル崩壊後の2004年。牛乳アレルギーの女の子が、大河料理教室で作った食事を食べた後にアレルギーを発症した。けれど充分に気をつけて牛乳由来のものは使っていなかったはず。弘子は、その日、女の子が食べたものをすべて聞き出したあとで、ある真相を見抜く。この時代、食品への異物混入や賞味期限偽造が相次ぎ、大きな問題となっていた。それが背景にある。
第三話はバブル黎明期の1984年。当時人気だったドラマ「金曜日の妻たちへ」を連想するような郊外の一戸建てで起きた事件。「24時間戦えますか」などと言われた企業戦士のあり方や、宴会の場で一気だの上司の酒が飲めないかだののアルハラなどがまかり通っていた時代が描かれる。
第四話は高度経済成長期の1965年。この時期、家事を担う主婦は、親が戦争で死んで家庭の味を習えなかったり、若い頃が戦中戦後でろくな食事ができなかったりして、家に伝わる家庭料理の断絶の危機だった。また、新たな料理や食材が海外から入ってきて、それまでの焼く・煮るだけでは対応できない料理も家庭で求められるようになった。そんな時代の主婦を描いている。
そして第五話は終戦直後の1947年。弘子がなぜ料理研究家になったかが綴られる。どの時代も、その時代がまざまざと思い出されるとともに、その当時の料理事情、どんなものが流行し、どんなものを食べていたか、料理にまつわるどんな出来事があったかなどが描かれ、それが物語のテーマにかかわってくる。
★読みどころ2)謎解きの面白さ
どの話にも、犯罪とまではいかないちょっとした謎があり、それを弘子が料理の知識を使って解決するのが興味深い。それ以外にも、五話全体を通して解かれるある真実もあって、謎解きとともに、戦後を生き抜いたひとりの女性のドラマティックな人生が浮かび上がる。
・料理と謎とドラマが三位一体となった作品。
友井羊『100年のレシピ』
双葉社から1980円で販売中です。
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