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菊池高弘『下克上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』

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★内容紹介
・先週から始まったCBCテレビの日曜劇場、「下克上球児」の原案となったノンフィクション。ドラマは三重県の高校の弱小野球部が甲子園に行くという話だが、これは実際にあった話を元にしている。今日紹介するのは、その元になった出来事を取材して書いたもの。
・その偉業を成し遂げたのは、津市にある三重県立白山高校。かつては部活動は盛んではなく、野球部もろくに活動していなかった。こう言ってはなんだが偏差値も低く、さらに生徒の素行も悪い。場所も山の中で交通の弁も悪く……とあまりいいイメージのない高校だった。
・その高校に、2013年、体育教師の東拓司(ひがしたくし)先生が赴任してくる。前任校では野球部の監督を務め、新たな高校でも当然野球部で甲子園を目指すつもりだったが赴任先が白山ということで、前任校の校長から謝られる始末。いざ赴任してみると噂どうりで、真面目にやっている部員はひとりだけ。ここから東監督は地域の中学やリトルシニアのチームをめぐって、有望な選手に声をかける。しかし学校の名前を聞くとまったく興味を持ってもらえない。
・ところが少しずつ、そんな選手たちが白山高校に入り始める。その理由が面白い(と言っては失礼だが)。なんと勉強ができなくて希望の強豪校に入れなかった、という生徒が複数いた。また、他県の有望選手が親の転勤で三重に来て、何の前情報もなく近いからと白山を選んだり、家庭の事情で自宅から通学できる公立校に入りたいという生徒もいた。そんなネガティブな理由で集まった生徒たちが部を変えていく。出ると負けで、選手の数が足りないこともあった2013年、5年を経て、2018年、ついに白山高校は三重県予選で優勝し、甲子園出場を果たす。
★読みどころ1)ドラマとの違いを味わってみる
あくまでもドラマの原案であって原作ではないので、ドラマはかなり色々設定を変えている。たとえば現実では五年かかったところを三年の話にしたり、主人公の監督は事情があって野球からは距離を置きたがってるというのも現実とは違うし、小日向文世さん演じる地域の有力者みたいな人もドラマだけのオリジナル。ドラマ初回であった、地域の草野球チームとの対戦も、もちろんドラマだけ。その一方で、勉強ができずにしかたなくこの高校に来たというあたりは現実通り。本に出てきたのと同じセリフが突然ドラマで使われたりすることも。
★読みどころ2)特に中日ファンの人に読んでほしい理由がある。
現実の白山高校は少しずつ強くなっていく過程で、毎年県予選で強豪・菰野高校と対戦する。2016年は手も足も出ず一方的な負け、2017年は食い下がるも負け、そして2018年で大金星をあげて甲子園に進む。この2017年と18年、菰野高校には現ドラゴンズの岡林勇希選手がいた。本の中でも岡林投手(高校時代は投手だった)が詳細に紹介され、白山高校との試合についての談話なども紹介されている。
・この地域が舞台の事実をもとにしたドラマということで、原案となったノンフィクションもドラマも、この地方の人ならではの楽しみがある。ぜひドラマのおともにしてほしい一冊。

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