多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

日明恩『ヒマかっ!』

[この番組の画像一覧を見る]

★内容紹介
・主人公は17歳の桧山光希(ひろき)。彼は小さい頃から幽霊が見える、場合によっては意思の疎通もできるという能力を持っていた。しかしそんな彼を母親が霊感商法に利用するようになる。ある事件をきっかけに光希が中学を卒業する頃から幽霊が見えなくなっていたのだがそれでも商売をやめようとしない母親から逃げるため、彼は家出をして東京にやってきた。
・しばらくはネットカフェで暮らしていた光希だったが、偶然出会った足場工事会社の社長が彼を家出だと見抜き、自分のところでアルバイトをするように勧めてきた。光希の事情を知った上でアパートも世話してもらったのだが、実はそのアパートがひとりでに部屋の照明がついたり消えたりするという、「出る部屋」だった。電灯がついたり消えたりするということは、幽霊はスイッチの近くにいるのでは、という話をすると、一緒にいた先輩社員のひとりが、電灯がきえたタイミングでスイッチの近くに突進、なんと幽霊を組み伏せてしまった。つまりこの先輩は、幽霊は見えないが触れる人だったという次第。するとこの先輩に組み伏せられた幽霊の姿が光希にも見え、声も聞けるようになった。それで話を聞いて退散させると、それが噂になり、光希たちは心霊絡みのトラブルにたびたび駆り出されるハメになる。
★読みどころ1)そのトラブルは本当に幽霊のせいなのか?
物語は連作で5つの話が入っている。閉めても閉めても扉が開いてしまうタンスの話や、庭の畑の一部だけ作物が枯れたりエアコンがすぐに壊れたりするシェアハウスの話、最近金縛りに合うという知り合いの話などなど。そのどれも幽霊は登場し、見える光希と触れる先輩、そしてもうひとり霊感はまるでないが性格のいい先輩の3人で解決していく。ただ、中には、幽霊がいるにはいるが、そのトラブルは幽霊のせいではない、というものが混じっている。人の悪意を幽霊のせいに見せかけているものだったり、その悪意の存在を幽霊がなんとか当人に知らせようとして結果として心霊現象になっているものだったり。つまりこの物語は単なるゴーストバスターズではなく、想いを伝える術を持たないがゆえに理由もなく恐れられているという弱者として幽霊を描いている。
★読みどころ2)幽霊たちは何がしたいのか
ここに登場する幽霊は、死んでからも何か心残りがあったり、好きな人のそばを離れられなかったり、伝えたいことがあったりするケースばかり。この3人のゴーストバスターズは、そんな幽霊達の思いを汲んで、人に伝えたり問題を解決してあげたりする。そして最終的には、光希が一時的に幽霊が見えなくなっていたきっかけがあかされるが、これがとても感動的!幽霊が現実にいるかどうかはさておき、なぜ幽霊という概念を人は生み出したのか。大好きな人が亡くなってすべてが消えてしまうことに耐えられず、目には見えなくてもそばにいてほしいとか、姿を見たいとか、何かが残っているという思いを託して幽霊というものを生み出したのではないか。であるなら、大事な人はなくなってしまってもいつも自分を見ていてくれるということになる。見ていてくれる人に恥ずかしくないように生きようと思わせてくれる、そんな結末が待っている。
・タイトルの「ヒマかっ!」というのはとてもポップな言葉だが、これも物語を読んだあとでは印象がかわるはず。
日明恩『ヒマかっ!』
双葉社から1980円で販売中です。
関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報