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京極夏彦「百鬼夜行シリーズ」

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★内容紹介
・著者の京極夏彦さんは、1994年『姑獲鳥(うぶめ)の夏』でデビュー。昭和28年の東京を舞台に、20ヶ月の間妊娠し続ける女性という摩訶不思議な出来事とその女性の夫の行方不明事件をモチーフにしたもので、妖怪小説と本格ミステリを融合させた作品。これが大ヒットし、1994年から2006年にかけて、シリーズが9作発表された。
・この「百鬼夜行」シリーズは2006年に9作目の『邪魅(じゃみ)の雫』が出されて以来ずっと新刊が出なかった(予告だけはされていた)が、今月、17年ぶりの新刊『鵼(ぬえ)の碑(いしぶみ)』が刊行され、出版界隈はお祭り騒ぎになっている。
・シリーズはどれも妖怪がかかわっているような奇妙で猟奇的で複雑な事件を扱い、主に探偵役として事件を解決するのが、古本屋兼神主の中禅寺秋彦。彼の旧制中学時代の同級生やその縁で知り合った、作家、刑事、探偵らがレギュラーメンバー。
・事件とその真相のサプライズもさることながら、このシリーズの最大の魅力は、とにかく「読んでいる間が楽しい」こと。事件に対してオカルティズム、脳科学、論理学、民俗学、宗教学、歴史学などあらゆるジャンルの膨大な蘊蓄がたっぷり語られ、そのひとつひとつがとても刺激的で興味深い。難しいことを言っているはずだが、文章がとても読みやすくてするする入ってくる。その工夫の一つが、語り手によって語り口調ががらっと変わること。中禅寺の章は理路整然として知的で落ちつているが、他の人物が語り手の章はがらりと雰囲気が変わる。一冊でいろんな風合いが楽しめ、しかも会話がユーモラスでテンポがよく、とにかく読んでいて楽しい。楽しすぎて何の事件だったか忘れるくらい。
・実はこのシリーズ、もうひとつ大きな特徴があって、とにかく本が分厚い。けれどこの長さがまったく苦にならない。むしろ読み終わりたくないと思わせる。
・そんな17年ぶりの新刊『鵼(ぬえ)の碑(いしぶみ)』をご紹介。17年ぶりとあって、ちょっとスペシャル感がある。これまでの作品に出て来たいろんな人物がオールスターキャストで勢揃いするというサービス。でもここから読んでも大丈夫。
・物語は昭和29年が舞台。五つのパートに分かれていて、それぞれ、蛇、狸、虎、猿、鵼という名前。鵼というのは妖怪で、頭が猿、胴体が狸、手足が虎、しっぽが蛇の形をしていると言われる。蛇の章では日光のホテルに滞在している作家が、ホテルのメイドが人を殺したという話を聞く。狸の章では刑事が消えた死体の事件を追う。虎の章では、探偵事務所に失踪人探しの依頼が来る。猿の章では、古本屋の中禅寺が日光の神社の古い書物を鑑定に出かける。それぞれまったく異なる話のはずが、次第に繋がっていく──という話。
これまでの作品は派手な事件が多かったが、今回は「何が起きているのか」を探るタイプのミステリ。
・京極さんは他にも多くの著作があり、『後(のちの)巷説百物語』で直木賞を、『覘き小平次』で山本周五郎賞を、『遠(とおくの)巷説百物語』で吉川英治文学賞などなど、あらゆる文学賞を受賞している、今や大御所作家。その大御所作家の原点である百鬼夜行シリーズの17年ぶりの新刊ということで、ぜひ手にとってください。 
京極夏彦「百鬼夜行シリーズ」『鵼の碑』
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