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中川越『すごい言い訳! 漱石の冷や汗、太宰のウソ』

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★内容紹介
・本書は夏目漱石や太宰治など文豪たちが残した手紙から、言い訳を集めて紹介したもの。浮気疑惑を恋人に釈明する手紙や、酒によって迷惑をかけたことを謝罪しつつ言い訳する手紙や、納税額をごまかそうとしたのを見破られて言い訳する手紙など、文豪たちの苦し紛れの言い訳や開き直りがいろいろ味わえる。その中に、感想文が書けなかった言い訳に使える(かもしれない)ものをご紹介。
★言い訳1)新聞小説の原稿がまったく書けなかったときの泉鏡花
泉鏡花といえば「高野聖」「外科室」など、耽美で美しい、流麗な小説を書いた人。言い訳の手紙も、その美しい文章の力を存分に発揮して、相手を煙に巻いている。文語文なのでわかりにくいが「先日お話申し上げ候新聞のが引き続きまだすみ申さず涼風たたば十四五回も先を進めて其のうちに1日も早く御おおせのを存じいろいろ都合あい試み候えどもお恥ずかしき義なら」これでは何のことかすぐにはぴんとこないかもしれないが、これ、つまり「暑くて書けませんでした」と言っている。それを「涼風たたば十四五回も先を進めて」、つまり、ちょっとでも涼しくなってくれれば十四五回分くらいの原稿は一気に書けるんですけどねー、こう暑いとなかなかねー、という意味。暑かったからなんていう勝手な言い訳でも、文学的な表現のせいで拡張高く見える。
★言い訳2)他の仕事を優先させてしまったと詫びる川端康成
「始終心には致して居りながら怠け癖の上に目前の金に追われて恥ずかしい仕事を続けてまいりました」始終心には致して居りながら、というのは、決して忘れていたわけではなく
ずっと気にはなってた、という意味。でも、もともと自分には怠け癖がある上に、貧乏だからすぐ金になるような仕事ばかり先にやってしまった、という意味。これを感想文が書けなかった言い訳に転用するなら、「たとえば受験が心配でどうしても試験科目の宿題から先にやってしまった。」という感じか。たぶん叱られるけど。
★言い訳3)相手の体調を心配して原稿を出さなかったという太宰治
太宰の担当編集者が病気になったと聞いた太宰の手紙によれば「一日も早く御なおりになるようしんから祈っています。私の方では原稿がそろっていつでもお送りできるようになっていますけどいまお送りするとあなたが責任を感じなさって無理などなさりは致しませぬ?」つまり、原稿はできてるんだけど、あなたの体調が悪いときに送って仕事を増やしてはいけない、と。このときは実際に原稿ができていたらしいので決して書けない言い訳ではなく、本当に相手のことを心配しているのだが、一斉に生徒が感想文を出したら先生がたいへんだと思うので、一週間ほどずらして提出します、と言い訳できるのでは。たぶん叱られるけど。
・他にも、いちばん強いのは志賀直哉方式。理由などわからないが、どうしても書けなかった、と開き直っている。どうしても、という言葉はそれ以上の言い訳すら拒否する最強ワードかも。

・実際にこれらの言い訳を使ってみるのもいいけど、まちがいなく叱られるので宿題はちゃんと早め早めにやっておくのがいいかと。なんならこの本で感想文を書いてみる?
中川越『すごい言い訳! 漱石の冷や汗、太宰のウソ』
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