多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

第169回直木賞予想

2023年07月13日(木)

カルチャー
★冲方丁『骨灰』(KADOKAWA)3回目
ディベロッパー会社に勤務する主人公は、担当する現場がSNSで「いるだけで病気になる」「人骨が出た」などと噂されているのを知り、渋谷の工事現場の地下に向かう。そこで彼が見たものは……。人の秩序は犠牲の上に成り立っているという社会の構造を描いたホラー。
直木賞でホラー作品は選ばれたことがないのでどう評価されるか?

★垣根涼介『極楽征夷大将軍』(文藝春秋)3回目
室町幕府を作った足利尊氏の物語。尊氏は野心も向上心もなく、足利宗家を継ぐのを嫌がり、ただ平穏に生きられればいいという性格だった。そんな尊氏がなぜ、人に慕われ、戦は連戦連勝、周囲の武将や天皇が次々と滅ぶ中、最後まで生き残ったのか。弟の足利直義(ただよし)と側近の高師直(こうのもろなお)の視点で足利尊氏を描く歴史小説。
垣根さんの歴史小説は視点が現代的。前回、垣根さんを批判した大御所が審査員から離れたため可能性が高くなったか?

★高野和明『踏切の幽霊』(文藝春秋)2回目
雑誌のライターをしている主人公が、幽霊が出ると噂の踏切の取材を命じられる。その場所では一年前に殺人事件が起きており、犯人は逮捕されたが行きずりの犯行らしく被害者の身元はわからないまま。事件を調べるうちに、思いがけない展開になり……。社会派ミステリと幽霊譚の融合。
高野さんは12年ぶり2回目。結構なキャリアの人がブランクがあって簡単に獲ってしまうことも。ただ作品的には地味か?

★月村了衛『香港警察東京分室』(小学館)初候補
日本で増加する国際犯罪に対応すべく、警視庁に日本と香港5名ずつのメンバーからなる特殊共助係が新設された。しかしそこに集まったのは各部署の厄介者ばかり。彼らの初仕事は、香港から日本に逃亡した犯罪者を追うことだった──。異なる価値観と正義感を持った10人のチームを描いた警察小説。
このラインナップの中では初候補。さらに別に人気シリーズがあり、候補がどうしてこっち?

★永井沙耶子『木挽町のあだ討ち』(新潮社)2回目
舞台は江戸。芝居小屋が集まる木挽町で、美少年が博徒を殺すという殺人事件が起きた。それから2年後、この犯人の友人だという青年が、事件の関係者たちを訪ねてきた。インタビュー形式で語られる当時の事件、そこにはある秘密が……。芝居の町を舞台に展開する時代ミステリ。
山本周五郎賞をすでに受賞でW受賞はあまり多くない。作品的には一番好き。過去の作品と構造が似ているといわれる可能性も。

今回の直木賞、大矢さんの予想は垣根涼介さんの『極楽征夷大将軍』若干忖度?
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