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山岡荘八『徳川家康』全26巻

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★内容紹介
・大河ドラマで注目の徳川家康。家康小説の金字塔です。
・書かれたのは1950年から1967年にかけての新聞連載。その後、単行本第1巻が1968年に刊行され、現在は全26巻の文庫で読めます。
・家康の母・於大の方の縁談から、家康が亡くなるまでの七十年以上を描いた大河小説。ギネスブックにも、世界最長の小説のひとつとして認定されている。
・織田の人質、今川の人質時代を経て、桶狭間、三河一向一揆、金ヶ崎、姉川、三方ヶ原、長篠、小牧長久手(ここまででまだ10巻)、小田原征伐、関ヶ原(18巻)、江戸幕府を開き、そして大坂の陣──と、ご存知の家康の生涯が綴られる。
★読みどころ1)家康のイメージを大きく変えた作品
今読んでもピンと来ないかもしれないが、この小説が出る前と出る後では、世間が家康に抱く印象が180度変わったと言われている。それまで家康は「狸親父」として知られていた。それは戦中まで、徳川幕府を倒した明治政府の流れで歴史が伝えられていたから。徳川は「悪者」でなければならなかった。それを山岡荘八は、戦のない平和な世を作るために真摯に努力する人物として描いた。他にも、大坂の陣で豊臣秀頼を助けようとしたり、朝廷を尊敬していたりと、当時としてはかなり意外な家康像を打ち出した。
★読みどころ2)高度経済成長期の世相にぴったりはまった作品
織田と今川に挟まれて独立できない若い時代から天下の将軍になるまでの生涯は、前へ前への高度経済成長期にバイブルのように読まれた。この後、農民から天下人になった豊臣秀吉の伝記などを含め、歴史小説をビジネス書として読む風潮が生まれるが、その先駆けとなった作品でもある。ただ、バブルがはじけて仕事で出世することが人生の目標ではない、という時代になってからは天下人よりも、負けた側や家臣の立場の人物を描く歴史小説が増えていく。
★読みどころ3)そんな昭和の小説を、今の目で読んでみる
これから『徳川家康』を読む人は、家康が悪者とされていた時代も知らず、高度経済成長期のビジネス書的読み方でもない、まっさらな状態で読むことになるのでまずは純然とした歴史の面白さそのものを味わってほしい。今は歴史上の人物の生涯を、生まれてから死ぬまで26巻も使うような作品はなかなか出ないので家康の生涯を知るには、70年前の作品とはいえ、やっぱりこれは読んでおきたい。その上で、最近の作家が家康をどう描いているか、読み比べてみると面白い。これの直後に出た司馬遼太郎の『覇王の家』や『関ヶ原』で家康がどう書かれたか、あるいは平成以降の作家が書いた桶狭間、関ヶ原、大坂の陣などの小説はどうか、ぜひ比べてほしい。特におすすめは安部龍太郎さんの『家康』。山岡荘八版には及ばないが、家康の生涯を描いて現在8巻まで出ている。さらには今の大河ドラマのノベライズもある。時代によって解釈が変わるのを感じられるはず。

山岡荘八『徳川家康』全26巻
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