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クレア・マッキントッシュ『ホステージ 人質』

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★内容紹介
・舞台はイギリス、主人公はCAのミナ。ミナの務める航空会社で、世界初のロンドンーシドニー直行便が就航することになり、マスコミやセレブを招いての初フライトが始まった。20時間以上かかる長距離フライトだが、ミナは夫のアダムとうまくいっておらず、距離を置きたいこともあってこのフライトに搭乗する。小学校一年生の娘のことが心配だったが、シッターもいるし、アダムが面倒をみていた。
・しかしフライトが始まってまもなく、ミナのもとにあるメッセージが届く。「従わなければ、娘は死ぬ」──そのメッセージはミナに、ハイジャックに協力するよう脅してきたのだ。乗客353名の命と、娘ひとりの命、どちらをとるかの選択を迫られて……。
★読みどころ1)盛り上げ方がすごい
実はハイジャックだとわかるのは物語がある程度進んでから。そこまでに、ミナの私生活の様子と機内の様子が交互に描かれる。ミナとアダムは子供に恵まれず、生後一年のあかちゃんを養子にして六歳まで育てたこと、ところが娘のソフィアはかなり育てにくい子で、ミナもアダムもたいへんな苦労をしていること、それでもふたりともソフィアをとても愛していること、ところがそんな時、アダムに浮気疑惑が出て夫婦に溝が生まれたこと、など。一方、機内ではファーストクラスの乗客ひとりひとりの事情が群像劇のように綴られる。有名なユーチューバーやアスリートがいたり、生まれたばかりの赤ちゃんがいたり、妊婦さんがいたり、夫のDVから逃げてきたという女性もいる。そんな、それぞれの事情を抱えた人たちが、いざハイジャックに直面した時にそれぞれの本音や素顔が出る。また、地上で待っているアダムと娘のソフィアにも危険が迫る。空中と地上と同時進行で進むサスペンスは実にエキサイティング。
★読みどころ2)究極の選択
娘の命か353人の命か、というミナの選択はもちろんだが、本書には他にもいろいろな選択が描かれる。ハイジャックという極限状態の中で、自分の安全のために他者を押し除ける人がいる。一方、他の人のために犠牲になろうという人もいる。それぞれの事情だけ見ても、親に従うか逆らうか、夫と別れるか我慢するか、娘を厳しく叱るか優しく機嫌を取るかといった日常レベルでの選択が多く描かれる。犯人の側も、自分が正義と信じることであれば多くの犠牲者を出しても執行すべきかどうか、という選択を迫られる。ただ選択を描くだけでなく、ポイントは、選択は間違えることもあるということ。そのときどうリカバリーするかが本書の読みどころ。
・ハイジャックの主犯は誰なのかというミステリも面白い。自分ならどうする、を問われる一冊。
クレア・マッキントッシュ『ホステージ 人質』
小学館文庫から1375円で販売中です。
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