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畠中恵『忍びの副業』上下巻

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★内容紹介
・舞台は江戸幕府が開かれて200年、十代将軍徳川家治の時代。主人公は甲賀忍びの末裔の若者三人組。戦国時代、忍びは諜報活動や実戦で大活躍した。彼らの動きが戦国武将たちの命運を決めるほど重要視されていた。しかし平和な世になって200年、秘密裏に情報を扱うのは将軍直属の御庭番となり、かつての伊賀・甲賀・雑賀といった忍びたちには回ってこない。家康の伊賀越えを助けた功績で、伊賀者は大奥警護、甲賀者は大手門警護の役目をもらったが200年も経てば仕事はすっかりルーチン作業で、手柄を立てて出世の道はない。甲賀忍びの一族の中では密かに忍びの術が伝えられてはいたが、使う場所もない。
・ところがある日、その三人組が今も忍びの技を使えることが、将軍嫡子である家基の側近に知られてしまう。その側近から、家基が暮らす西の丸に呼び出された三人組が聞かされたのは家基を呪い殺すお札が見つかったということ。ひとつとは限らないので忍びの技で他にないか見つけてほしい、という。首尾よく屋根裏などからお札を見つけた三人だったが、その力を見込んだ側近から家基の護衛を命じられた。家基は家治のたったひとりの息子なので次の将軍を狙う派閥が家基を暗殺する恐れがあるという。これは甲賀忍びの出世のチャンスだ、と沸き立つ三人だったが、果たしてうまくいくのか……?
★読みどころ1)忍者ものの面白さがてんこもり!
少年漫画に出てくるような忍者バトルあり、さまざまな忍者道具の登場あり、くのいちも出てくる。アクションだけではなく頭脳戦もあるし、ちょっと不思議で幻想的な忍術を使う場面も。
★読みどころ2)暗殺犯を探すミステリの面白さ
家基の暗殺につながりそうな不穏な事件が複数起きるが、その犯人がわからない。一派だけなのか、それとも将軍を狙う複数の派閥があるのか。田沼意次や松平定信、御三家筆頭の尾張も怪しい動きをしており、その中から犯人を絞る過程がエキサイティング!しかも、家基暗殺犯を探すのに、実は暗殺に最も向いているのは当の忍びたちなので、家基の周囲の者からも信用されない。そんな中、彼らが周囲の信頼を得ていく過程にも注目。
★読みどころ3)要らなくなった者たちの悲哀
 そんな楽しい忍者バトルを描きながらも、根底にあるのは、時代が変わってしまってもはや不要の存在になってしまった忍びたちの悲しみ。要らないといわれ、時代遅れと差別され、笑われる。忍びたちにとって、過去の栄光にすがるのはみっともないけど、でも過去を切り捨てることもできず、使う宛のない技術を代々伝えていく。一度途絶えた技術は、2度と戻らない。本当に古いものを切り捨ててもいいのか?
・楽しい忍者小説でありながら、実は底辺に悲しみをたたえた一冊。

畠中恵『忍びの副業』上下巻
講談社から上下巻それぞれ1540円で販売中です。
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