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小川哲『君のクイズ』

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★内容紹介
・主人公は、クイズ番組やクイズ大会に参加するクイズプレイヤーの三島玲央。中学生でクイズの面白さに目覚め、大学ではクイズ研究会に属し、就職してからもさまざまな大会や番組に挑戦している。ある日、生放送の大規模なクイズ番組に出場した三島は決勝まで進出、
決勝の相手は知性派タレントとして有名な本庄絆だった。早押しで7問正解で優勝という中、ふたりは互いに一歩も引かない。そして6対6で迎えた大詰め、最後の一問で事件が起きる。アナウンサーが「問題」と言ったあと、まだ問題文が1文字も読まれないうちに本庄が早押しボタンを押した。お手つきか、とみんなが思った中、本庄は「ママ・クリーニング小野寺よ」と口にする。実はそれは東北ローカルのクリーニングチェーンの名前で、それこそがこれから出されるクイズの正解だった。いったいなぜ本庄は問題を聞く前に正解できたのか?
・ヤラセ疑惑が渦巻く中、番組は「不正はなかったが、不適切な演出があった」と声明を出す。また、本庄は優勝と賞金を辞退。その後、人前から姿を消した。三島はどうしても納得できず、本当にヤラセだったのか、そうでないとしたらなぜ本庄が正解できたのか、番組の録画を何度も見返しながら調べ始める。
★読みどころ1)クイズという競技の面白さ
三島を通して語られる「クイズという競技で競うこと」が、まるでスポーツの技術論を聞いているかのようでとても面白い。クイズは知識の多い人が強いと思いがちだが、それだけではなく、問題はどのように作られるのかといったクイズの理論や、問題文を先読みするテクニックなども必要になるなどのコツが語られる。たとえば、問題文はもっと長いのに、最初の数文字聞いただけで正解を出す人がいる。そんなことがなぜ可能なのかなど、具体的な例がたくさん出てきて、実に興味深い。知識とテクニックと経験から、コンマ1秒でも早く早押しボタンを押して正解を出すという頭脳スポーツの醍醐味とその奥深さが味わえ、アスリートの話を読んでいるような興奮がある。
★読みどころ2)クイズと人生が重なる面白さ
作中にはクイズの問題が難問も登場するが、その問題文を聞いて正解に到達するまでのコンマ数秒の間の三島の脳内風景が綴られる。その情報を得たときの自分の記憶につながり、それら無数の経験が自分を作っているのだということを体感していく。クイズに正解したときの「ピンポン」という正解音は、ただ答えの判定をしている音ではなく自分の人生を肯定する音のように思える──というくだりが印象的。また、クイズに真摯に取り組んでいる主人公たちと、
クイズがそんな奥深いものだとは思いもせず、自分の想像の範囲内だけで他者を評価する周囲の温度差の描写も読ませる。
・これを読んだら、クイズ番組の味方が変わる一冊。
小川哲『君のクイズ』です。
朝日新聞出版から1540円で販売中です。
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