★内容紹介
・過去の思い出の日を、ひとつだけ、もう一度体験できるとしたら？そんな願いを叶えてくれる〈映人〉という謎の人物がいる。その人に連絡すれば、過去の思い出を、その日に戻ってもう一度体験できるらしい。過去を変えることはできないが思い出を追体験することでもう一度幸せを味わいたかったり、後悔にけりをつけたい人たちが〈映人〉のもとを訪れる様子を連作で綴ったもの。
・第一話は、高校時代に父親が殺されたという過去を持つ女性。そのときすでに父親は離婚して別のところに住んでいたが、進路のことで相談すべく父のもとを訪ねた。そして主人公が帰ったあと、翌日、父が死体で発見された。いったいその日に何があったのか、見落としていることはないか、もう一度体験したい。
・第二話は、高校時代の恋人との最後のデートをもう一度体験したいという主婦。優しい恋人と結婚したつもりだったのに、三年経つとだんだん夫が変わってきたように感じ、ストレスの溜まる毎日に。この主人公には高校時代大好きだった恋人がいたが、その恋人は彼女とのデートの帰り道に交通事故で死んでしまった。自分が本当に愛しているのは彼だけだ、もう一度彼に会いたい。
・第三話は、高校時代の文化祭の日に戻りたい３０歳のサラリーマン。今の会社は自分の力を正当に評価してくれないバカばっかりで、仕事がつまらない。自分はこんなものじゃないはずなのに。自分が最も輝いていたのは、高校の文化祭で上演予定だった演劇がトラブルに見舞われた時、自分の才覚で見事成功に導いたとき。みんなにヒーローだと称えられたあの日の自分こそ本当の自分なので、あの日をもう一度味わいたい。
・第四話、第五話はやや趣向が違うのでここでは言わないが、それぞれの理由で思い出をリバイバルしたい人の物語が綴られる。依頼人たちは〈映人〉によって過去のその日にタイムスリップしたような状態になり、同じ一日を体験する。
★読みどころ１）リバイバルすることで、当時は気づかなかったことに気づく
タイムスリップではなくあくまでリバイバルなので、過去を変えることはできず、ただ同じ日を体験するだけなのだが、それは大人になった主人公の目を通しているのがポイント。大人の目で見直すと高校生のときには気づかなかったいろんなことに気づいてしまう。第一話の父を殺された女性は、犯人はもしかしたら……と推理できる材料に気づくし、第二話の主婦は、過去の恋人と会話することで、結婚して変わったと思った夫はもしかしたら……と気づく。さらに、実際に今の目で見返すと、心の中の思い出と違う箇所も多々あり、人がいかに「見たいものだけを見ているか」を浮き彫りにする。
★読みどころ２）思い出は何のためにあるのか
リバイバルを通して気づいたことや知ってしまった真実の中には残酷なものもあるが、それを知った主人公がどうするのかが読みどころ。特に第二話の主婦や第三話のサラリーマンは、今の生活が不満で、幸せだった過去に逃げ込みたいと思っていた。けれどリバイバルを通して、思い出は逃げ場ではなく、その後の人生を支えてくれるものであることに気づく。
・最後には〈映人〉の正体に迫るサスペンスフルな展開もある、ファンタジックな物語。
彩坂美月『思い出リバイバル』
講談社から１７６０円で販売中です。
・過去の思い出の日を、ひとつだけ、もう一度体験できるとしたら？そんな願いを叶えてくれる〈映人〉という謎の人物がいる。その人に連絡すれば、過去の思い出を、その日に戻ってもう一度体験できるらしい。過去を変えることはできないが思い出を追体験することでもう一度幸せを味わいたかったり、後悔にけりをつけたい人たちが〈映人〉のもとを訪れる様子を連作で綴ったもの。
・第一話は、高校時代に父親が殺されたという過去を持つ女性。そのときすでに父親は離婚して別のところに住んでいたが、進路のことで相談すべく父のもとを訪ねた。そして主人公が帰ったあと、翌日、父が死体で発見された。いったいその日に何があったのか、見落としていることはないか、もう一度体験したい。
・第二話は、高校時代の恋人との最後のデートをもう一度体験したいという主婦。優しい恋人と結婚したつもりだったのに、三年経つとだんだん夫が変わってきたように感じ、ストレスの溜まる毎日に。この主人公には高校時代大好きだった恋人がいたが、その恋人は彼女とのデートの帰り道に交通事故で死んでしまった。自分が本当に愛しているのは彼だけだ、もう一度彼に会いたい。
・第三話は、高校時代の文化祭の日に戻りたい３０歳のサラリーマン。今の会社は自分の力を正当に評価してくれないバカばっかりで、仕事がつまらない。自分はこんなものじゃないはずなのに。自分が最も輝いていたのは、高校の文化祭で上演予定だった演劇がトラブルに見舞われた時、自分の才覚で見事成功に導いたとき。みんなにヒーローだと称えられたあの日の自分こそ本当の自分なので、あの日をもう一度味わいたい。
・第四話、第五話はやや趣向が違うのでここでは言わないが、それぞれの理由で思い出をリバイバルしたい人の物語が綴られる。依頼人たちは〈映人〉によって過去のその日にタイムスリップしたような状態になり、同じ一日を体験する。
★読みどころ１）リバイバルすることで、当時は気づかなかったことに気づく
タイムスリップではなくあくまでリバイバルなので、過去を変えることはできず、ただ同じ日を体験するだけなのだが、それは大人になった主人公の目を通しているのがポイント。大人の目で見直すと高校生のときには気づかなかったいろんなことに気づいてしまう。第一話の父を殺された女性は、犯人はもしかしたら……と推理できる材料に気づくし、第二話の主婦は、過去の恋人と会話することで、結婚して変わったと思った夫はもしかしたら……と気づく。さらに、実際に今の目で見返すと、心の中の思い出と違う箇所も多々あり、人がいかに「見たいものだけを見ているか」を浮き彫りにする。
★読みどころ２）思い出は何のためにあるのか
リバイバルを通して気づいたことや知ってしまった真実の中には残酷なものもあるが、それを知った主人公がどうするのかが読みどころ。特に第二話の主婦や第三話のサラリーマンは、今の生活が不満で、幸せだった過去に逃げ込みたいと思っていた。けれどリバイバルを通して、思い出は逃げ場ではなく、その後の人生を支えてくれるものであることに気づく。
・最後には〈映人〉の正体に迫るサスペンスフルな展開もある、ファンタジックな物語。
彩坂美月『思い出リバイバル』
講談社から１７６０円で販売中です。
