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第167回直木賞受賞作 窪美澄『夜に星を放つ』

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★窪美澄さん
窪さんは2010年に『ふがいない僕は空を見た』でデビュー。デビューから一貫して、社会からこぼれそうになっているや、生きづらさを抱えた人たちを描いてきた。この番組では5年前に、少子化対策として政府が強制的に国民を結婚させるという世界を描いた『アカガミ』を紹介しました。
★内容紹介
・受賞作は短編集。連作ではなく、それぞれ独立した物語だが、いずれも大切な人間関係を失った人の物語。
「真夜中のアボカド」
婚活アプリで出会った人と付き合い始めてすぐ、コロナ禍になった。人と思うように会えない中で、目に見えるつながりを欲する女性の心理を繊細に描く。
「銀紙色のアンタレス」
祖母の家で夏休みを過ごす男子高校生の物語。海で出会った子連れの女性に一目惚れをするが……。一夏の淡い恋の物語。
「真珠星スピカ」
交通事故で死んだ母の幽霊が見える女子中学生の話。学校でいじめに遭い、保健室登校をしているが、ある日、娘のピンチに幽霊の母が……。
「湿りの海」
妻と離婚し、幼い娘も妻についていって、一人暮らしになった男性の話。隣にシングルマザーが引っ越してきて、思わず別れた妻子と重ね合わせて見てしまうが……。
「星の髄(まにま)に」
父の再婚で新しい母親と生まれたばかりの弟ができた小学生が主人公。新しいお母さんも弟も大好きで、いい関係だったが、コロナで父親の飲食店の経営が厳しくなり、母も初めての子育てで疲弊する中、主人公の少年は次第に居場所を失っていく。
・どれも、それぞれの登場人物が抱えている問題が鮮やかに解決して終わるわけではないし、主人公が常に100%正しいわけでもない。足掻いたり拗ねたり、時には投げやりになったりしながらも、それぞれ失った人間関係を抱えたまま、それを否定するのではなく、いつしかそんな経験も自分の一部になっていくのだろうと思わせるような、優しい物語。
・収録作はすべて別々の話だが、すべてに星や星座がモチーフとして登場する。その星座にまつわる物語が、短編の内容とリンクしているので、星好きの人にもおすすめ。また、窪さんはとにかく文章がうまく、主人公の年齢や環境に合わせた語り口調で、読者の胸にすっとしみとおってくるような文章を書く。そのテクニックにも注目。

第167回直木賞受賞作 
窪美澄『夜に星を放つ』
文藝春秋から1540円で販売中です。
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