多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

赤神諒『はぐれ鴉』

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★内容紹介
・時は江戸時代初期、豊後の国、竹田藩が舞台。(大分県山間部、熊本と境を接するエリア)ある夜、城代家老の屋敷に何者かが侵入し、一族から使用人まで皆殺しにする。たったひとり生き残ったのは六歳の嫡男、次郎丸。彼は物陰から侵入者を見て、それが大好きな叔父の玉田巧左衛門だと知る。あの優しい叔父さんがなぜ兄の一家を殺したのか。わけもわからないまま次郎丸は屋敷を逃げ出し、人の助けを借りて船に乗せてもらい、江戸へと出奔した。
・それから14年が経った。次郎丸は一介の浪人として江戸で剣の腕を磨き、山川才次郎と名前を変えて竹田藩の剣術指南役として故郷に戻ってくる。彼は14年前に死んだことになっているので、誰も気づかない。才次郎が竹田に戻った理由はひとつ、家族の仇である叔父を討ち取るためだった。叔父は現在、自分が殺した兄の跡を継いで家老になっている。ところがいざ故郷に帰ると、才次郎は意外な事実に直面する。
・ひとつは、まがりなりにも剣術指南役としての役目はちゃんと果たすつもりだったのに、藩士にぜんぜんやる気がない。叔父ではないもうひとりの家老がブラック上司で、思いつきで仕事を増やしては藩士に振るので、剣の鍛錬をする時間も余裕もない。こんなのでこの藩、大丈夫なのか? 藩内のドタバタがコミカルに描写されてとても楽しい。
・もうひとつは、仇と憎んできた叔父が、家老でありながらめちゃくちゃ貧乏だったこと。野良仕事をしている彼のもとに、藩士や農民や町人が彼を慕って集まってくる。洪水が起きやすい場所に堤をつくるため、率先して土木作業をしたりもする。自分の親を殺してその地位を奪ったはずなのに、これはいったいどういうことだ?
・才次郎の敵討ちはどうなるのか。実は竹田藩には、ある大きな秘密があった──。
★読みどころ1)竹田市の観光案内のような物語
現在も残る名所旧跡や武家屋敷の町並み、温泉、阿蘇くじゅう連山などの観光資源が物語の舞台として登場し、この本を片手に旅行したくなるほど。お城は岡城という名前で、竹田出身の滝廉太郎が「荒城の月」の曲想を練ったことで有名。また土地に伝わる伝説や産業、名物などもたくさん登場する。
★読みどころ2)竹田だからこそ成立する時代ミステリ
才次郎は14年ぶりに竹田に帰って「この藩、なんか変だぞ?」と感じることが多々ある。一族を殺した叔父の真意をはじめ、小さな謎がたくさんあって、最終的にはとある大きな謎が解かれるが、これがサプライズ抜群。この真相は「ほんとうにあったこと」をもとにしており、このミステリの真相もまた、今の竹田で見ることができる。
・時代ミステリとしての謎解きと、豊後の実際の歴史の興味深さと、お家騒動やチャンバラといった時代小説の面白さが、すべて詰まった一冊。
赤神諒『はぐれ鴉』
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