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そえだ信『掃除機探偵の推理と冒険』

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★内容紹介
・カフカの有名な小説『変身』は、「目が覚めたら毒虫になっていた」というものだが、これは「目が覚めたらお掃除ロボットになっていた」という話。
・主人公は札幌の警察署に勤務する警察官の鈴木勢太。彼は捜査中に交通事故に巻き込まれ気がつくと、どこともしれぬ部屋のお掃除ロボットの中に意識が入り込んでいた。直径35センチ、高さ9センチ。最初は混乱していたが、試行錯誤の末にカメラとAI搭載で、WiFiネット接続ができることが判明(お掃除ロボットにスマホがついているような状態)ネットニュースを調べると自分の体は意識不明の重体で小樽の病院に収容されていることがわかった。
・位置情報を確認するとお掃除ロボットがいるのは札幌のとあるマンションの一室、交通事故の翌日らしい。勢太はなんとしても小樽の自宅に戻りたい理由があった。勢太は小学生の姪と二人暮らし。姪の母で勢太の姉は最初の夫と死別後、子連れで再婚したが、二度目の夫がDVで妻子を殴っていたのを警察沙汰にして離婚した経緯があった。ところがその後、母親も亡くなってしまい、勢太は大事な姪と一緒に暮らしてきた。しかし勢太が入院中となれば、元の義理の父親が姪に手を出して来かねない。どうすればいいのかわからないが一刻も早く小樽へ戻らねば──と思いながら室内をうろついてみると、なんとそこには死体が!
・この死体は何なのか、勢太はお掃除ロボットの身で30km離れた小樽に帰ることができるのか?
★読みどころ1)お掃除ロボット視点の斬新なロードノベル
お掃除ロボットは秒速5センチ、時速だと1.8キロしか進めない。しかも充電には四時間かかり、フル充電でも稼働時間は最大六時間。超えられる段差は2センチまで。WiFIがないとネットにもつながらない。できるのはゴミを吸い込むことと吐き出すこと、あとはアラームを鳴らすことくらい。小樽まで30km、充電しながらどうやって進むのかという冒険がまず面白い。昼間は目立つので夜中だけの移動にしたが、子供に拾われたり、自転車に跳ねられたり。できることが限られている中で予想のつかない展開がたくさん!
★読みどころ2)ミステリとしての面白さ
道中で、彼を拾った人物の家庭の問題に巻き込まれ、カメラアイで見えたものから何が起きているのか推理してお掃除ロボットなりに対応しようとする。最終的に姪を狙うDVの義理の父親とも対決することになるが、その顛末に「その手があったか!」と感心。
・楽しくて気持ちいい、読むと気分のアガる冒険小説です。

そえだ信『掃除機探偵の推理と冒険』
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