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上橋菜穂子『精霊の守り人』

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★著者
著者の上橋菜穂子さんは1989年に児童文学作家としてデビュー。1996年に刊行された『精霊の守り人』とそれに続くシリーズが大ヒット、児童はもちろん読書好きの大人から大きな支持を得た。その後、数々の賞を受賞したのち『鹿の王』で、児童文学のノーベル賞といわれる国際アンデルセン賞を受賞、日本では2人目という快挙だった。
★「守り人」シリーズ
『精霊の守り人』はのちに10巻を超える守り人シリーズの第一作。シリーズ前半は基本的に一冊完結の物語なので、まずはこれから手にとってほしい。
★内容紹介
・舞台は「新ヨナ皇国」という名前の異世界。イメージとしては古代の東アジア(三国志とか)を思い浮かべてもらえればいいかと。そこは、人の世と精霊たちの世が混在する世界。主人公は30歳の女用心棒、バルサ。バルサはひょんなことから川に落ちたその国の第二皇子を助けた。感謝した王妃はその夜、宮殿でバルサを歓待するが、深夜にそっと忍んできて、皇子を連れて逃げてほしい、守ってほしいと頼む。
・実は11歳の第二皇子は、体の中に異界の精霊の卵を生みつけられていた。それは国に災いをもたらすとされ、実の父である帝が第二皇子を殺そうとしているという。バルサは王妃の依頼を引き受け、第二皇子チャグムを連れて逃亡する。もちろん追っ手がかかり、バルサはチャグム皇子を守りながら逃亡を続けるが、チャグムの中の卵は帝が思っているようなものではないことが次第にわかる。いったいその卵は何なのか、チャグムは卵から開放されることができるのか、それまでバルサはチャグムを守り通すことができるのか──。
★読みどころ1)圧倒的な世界観
異世界ファンタジーは「どんな世界を舞台にするか」がまず読みどころで、本書は精霊の世界と混じっているというのがひとつのポイント。けれど完全に架空の世界を作家が好きに作ったわけではなく、そこにはいろんな形で現実世界が投影されている。たとえば精霊の卵を宿したものを帝が殺そうとするのは、この国の成り立ちにもかかわる伝説が元になっているが、実はそれは帝の先祖が自分たちに都合の良いように歴史を書き換えた結果だった。さらに、本当の歴史を知る先住民族は国の片隅に追いやられ、本当の歴史が忘れ去られ、伝えるものがいなくなり、そのため正しい解決策がわからなくなっている。歴史の書き換えにNOと言えるか、歴史を正しく伝えることの意味を、この物語は問うている。
★読みどころ2)チャグムの成長物語
皇子として何一つ不自由なく暮らしてきたチャグムが逃亡生活の中で少しずつたくましくなっていく。それはバルサやその仲間がチャグムをちゃんとひとりの人間と認め、その上で、守っているから。大人の役割とは何かを教えてくれる。
・出版から四半世紀以上が経つが、今も読み継がれている名作ファンタジー。

上橋菜穂子『精霊の守り人』
偕成社からは単行本で1650円、文庫本では新潮文庫から693円で販売中です。
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