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呉勝浩『爆弾』

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★内容紹介
・ある夜、ひとりの中年男が警察に連行される。酒屋の自動販売機を蹴って、止めに入った店主を殴ったというケチな傷害事件。どうもこの男は酔っ払っているようで、名前を聞いたらスズキ・タゴサクと、とても本名とは思えない名を言う。さらに住所は記憶喪失で忘れてしまった、などと言い、身元がわかるものも持っていない。
・とりあえず身元確認だけはしなくちゃいけないのであれこれ聴取していると、スズキ・タゴサクは取調べの最中に「霊感には自信がある」「10時ぴったり、秋葉原の方で何かある」と言い出した。そして10時、秋葉原の廃ビルで爆発が起きた。まさかこいつが爆破犯なのか?スズキはさらに「ここから3度、次は1時間後に爆発します」と告げる。そしてその通りに、今度は東京ドームシティの近くで爆発が起き、ケガ人が出てしまった。
・警察は取調べに本腰を入れるが、スズキの終始ふざけているような物言いに苛立つ捜査陣。あまつさえスズキは警察相手に心理テストのようなものを持ちかける。ところがその中に次の爆破の場所のヒントが隠されていて──。果たして警察はスズキの謎かけを解いて爆発を阻止できるのか?そしてスズキの目的は?
★読みどころ1)スズキと警察の知恵比べ
スズキはまったく関係なさそうな話を長々と話すが、実はよくよく聞いているとその中に次の場所と時間のヒントがある。それを読み解けるかどうかの戦いがとてもエキサイティング。単なる頭脳戦ではなく、推理した場所に警察が駆けつけて爆弾を探す、その過程にも本当にあるのか、間に合うのかというスリルがある。あるかどうかわからないのに付近を立ち入り禁止にしたりという警察の悪戦苦闘も読みどころ。
★読みどころ2)警察官たちの群像劇
直接スズキの取調べにあたる刑事だけではなく、爆弾を探す警察官たちやスズキの背後関係を調べる刑事たちそれぞれにドラマがある。そのドラマが、爆弾を通じて絡み合い、ひとつの筋が見えてくる様子は圧巻。
★読みどころ3)スズキの動機
ネタバレになるので動機はここでは言えないが、人の悪意や無関心が物語のテーマ。今の日本にうごめく不寛容や他者への攻撃性はなぜ生まれ、どこに向かうのか、そして自分は「どちら側」の人間なのかを考えさせられる。
・今年上半期、読むべき一冊。

呉勝浩『爆弾』
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