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小早川涼『包丁人侍事件帖シリーズ』

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★内容紹介
・時代は文政年間、舞台は江戸。主人公は御家人の鮎川惣介。彼のお役目は江戸城御広敷御膳所台所人、つまり将軍の食事を作る武士のこと。市井の料理人とは違って、江戸城では食事を作るのも武士の役目。惣介はたぐいまれな嗅覚と料理の腕を見込まれ、将軍の料理番となった。したがって剣の腕はからっきし。料理は作るのも食べるのも大好きで、三十代後半という年齢ですでに哀切漂うメタボ体型。家庭では、妻の尻に敷かれ、変わり者の娘と生意気盛りの息子に手を焼く父でもある。料理を褒められたのをきっかけに、月に一、二度、将軍家斉から直々にお呼びがかかって話し相手を務めるのが恒例行事となっている。
・主人公としては少々頼りないが、その代わり、彼の親友・片桐隼人がかっこいい。大奥添番という、つまりは警備担当の武士で、相当の剣客。見た目もスマートで、クールで真面目。
・そんな対照的なコンビがお城内外の事件に巻き込まれ、隼人の剣と惣介の鼻で解決するシリーズ。「包丁人侍事件帖」として7巻、その後「新・包丁人侍事件帖」として
4巻が刊行されている。
★読みどころ1)江戸のサラリーマン小説
料理番というのはいわば技術職の公務員。決められた時間に登城し、それぞれの担当の料理を作る。もちろん腕はいいが、腕一本で勝負する市井の料理人とはスタンスが違う。
惣介にとって料理は「お役目」で、失礼すれば首が飛ぶ。ルールは多いし、上司の命令は絶対だし、人間関係も気にせねばならない。サラリーマンの「あるある」がたくさん詰まっている。特におすすめは6巻の「くらやみ坂の料理番」サラリーマンには逆らえない、人事異動がある。惣介は将軍担当から、将軍嫡子・家慶の食事を作る西の丸へ異動になった。ところがその御膳書ではパワハラがまかりとおっていて……というもの。これを惣介がどう解決していくかが読みどころ。
★読みどころ2)それぞれの巻で起きる事件と、そのミステリ的展開。
どの巻でも事件が起きる。さきほどはパワハラだったが、他にも殺人事件があったり、非番のときに起きた騒ぎだったり、料理に関するデマだったり、盗難事件だったり。中には、将軍に献上する食べ物の中に毒が入っていたという事件も。それを惣介の鼻と頭脳で推理し、いざというときには隼人の剣がものをいう。ミステリの面白さと、爽快な謎解きが楽しい。
★読みどころ3)料理の描写
毎回、実にさまざまな料理が登場する。特に将軍が何を食べていたのか、それがどういうシステムで作られていたのかという点は、時代考証もしっかりしていてとても興味深い。一方、惣介が普段食べているものもたくさん登場。またこの描写がとても美味しそうで単なる塩むすびですら、とことん美味しそうに書いてくれるのでお腹が空くこと間違いなし。
・江戸城の武士の仕事の様子がわかり、謎解きもあり、美味しい料理もあり、さらには惣介一家のにぎやかな描写もありと、一粒で何度も美味しいシリーズ。続きものなので、刊行順にどうぞ。
小早川涼『包丁人侍事件帖シリーズ』
角川文庫から、616円~792円で販売中です。
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