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西村京太郎『天使の傷痕』

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・西村京太郎さんは1961年、短編「黒の記憶」が雑誌掲載されてデビュー。1978年に刊行された鉄道ミステリー第一作『寝台特急(ブルートレイン)殺人事件』のヒットで、一躍鉄道ミステリーのヒットメーカーとして人気作家になる。だが、あまりに鉄道ものがヒットしたため、出版社からの注文が鉄道ミステリに集中し、他のジャンルがあまり書けなくなるという状態に。実は初期にはさまざまなジャンルのミステリを書いており、傑作も多い。
・『四つの終止符』1964年の単行本デビュー作。
聾唖の青年が殺人の濡れ衣を着せられるという障害者差別の実態を正面から描いた硬派な社会派ミステリ。
・『殺しの双曲線』1971年。
アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」を下敷きにしたトリッキーな本格ミステリ。
・『名探偵なんか怖くない』1971年。
エラリー・クイーンやポアロ、メグレ警視、明智小五郎という有名なミステリの名探偵たちが集まり、日本の事件を推理するというパロディ小説。フランスでも刊行された。
・『おれたちはブルースしか歌わない』1975年。
青春ミステリ。デビューを目指すブルースバンドの青年たちが、自分たちの曲を盗作した犯人を追う。70年代の若者の風俗を取り入れ、文章も19歳の青年らしくポップな語り口調の変わり種。
・『消えたタンカー』1973年。
沈没したタンカーの船長が、救出されたにもかかわらず、後日死体で発見されるという海洋ミステリ。西村さんは船が好きで、初期は海洋ものも複数書いている。そしてこの作品で、後に鉄道ミステリのレギュラーとなる十津川警部が登場。十津川警部の初登場は鉄道ではなく船の事件だった。
・この他にも、『無明剣、走る!』という時代小説も1982年に出されている。
・『天使の傷痕』は1965年の江戸川乱歩賞受賞作で、単行本としては2冊目になる。
★内容紹介
主人公は新聞記者の田島。彼は休みの日に恋人と一緒にハイキングに出かけたところ、胸に刃物を刺された男と出くわす。その男は「テン……」と言い残してその場で死亡。のちにその男は、フリーの雑誌記者で、つかんだネタで人を強請っていたことが判明する。警察の捜査と並行して、田島自身も調査を続けるが、事件は思わぬ方向に……。
★読みどころ
実は犯人は意外と早くわかる。もちろんそこまでにも意外な展開やサプライズはたくさんあるが、犯人がわかってからが物語の真骨頂。この事件の背景には、この当時、大きなニュースになっていたある社会問題があり、それをどうすべきか、どう考えるべきかを読者に問いかける社会派ミステリになっている。
・鉄道だけじゃない西村京太郎作品をぜひ読んでほしい。
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