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アガサ・クリスティ『ナイルに死す』

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★内容紹介
・ジャクリーンとサイモンという恋人同士がいる。サイモンはイケメンだが失業中のため、ジャクリーンは親友で大富豪の娘のリネットに、サイモンの就職を頼んだ。ところがリネットはイケメンのサイモンに一目惚れ。ジャクリーンから奪う形で結婚してしまう。
・リネットとサイモンはエジプトに新婚旅行に出かけた。ところがその旅行中、行く先々にジャクリーンがつきまとう。新婚のふたりは逃げるようにナイル河クルーズの観光船に乗り込んだが、そこにもジャクリーンがついてきた。ジャクリーンは拳銃を持ち込んでおり、ついに船内でサイモンに向けて発砲してしまう。サイモンは足のケガで済んだが、ジャクリーンの興奮がおさまらないため、同じ観光船に乗っていた人々が協力してジャクリーンを部屋に監禁した。ところが翌朝、リネットの死体が発見される。凶器はジャクリーンが持っていた拳銃と思われるが、昨夜の騒ぎで行方不明。しかも動機を持っているジャクリーンは、一晩監禁された状態にあった。果たしてリネットを殺したのは誰なのか。同じ観光船に乗り合わせていた名探偵エルキュール・ポアロがその謎に挑む。
★読みどころ1)1930年代のエジプト旅情ミステリ
クリスティの夫は考古学者で、エジプトやイラク、シリアなどで発掘調査をしており、クリスティもよく同行していた。そのためこの時期のクリスティには中東を舞台にしたものが多く、特にこの作品はナイル河流域にあるエジプトの遺跡が数々登場する。さらにこれより少し前までエジプトはイギリスの統治下にあり、この時代は独立はしていたものの、実際はまだイギリスの影響が強かった。イギリス人がエジプトをどう見ていたか、植民地時代の慣習や文化などが垣間見えるのも興味深い。
★読みどころ2)旅情の中に仕込まれた伏線
この小説は400ページほどある長い話だが、リネットが殺されるのはなんと200ページ過ぎてから。前半は恋人を奪われたジャクリーンが、奪ったリネットと元カレのサイモンの新婚旅行にひたすらつきまとう様子が、エジプトの観光地の紹介とともに描かれる。実はその中に伏線が入っていて、事件が起きた段階で手がかりはほぼ揃っている。読者を旅情と三角関係に引きつけておいて、実はミステリの仕掛けを張り巡らせているというクリスティの技術が光る。
・映画はおそらく現代的な改変が加えられていると思われるので、ぜひ原作と比べてほしい。
アガサ・クリスティの『ナイルに死す』
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