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水生大海『ランチ探偵 彼女は謎に恋をする』

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・人気ミステリシリーズの第3弾.このシリーズはランチ合コンが舞台。恋人募集中のOL、麗子が出会いを求めて男女2対2のランチ合コンを精力的に企画する。合コンに付き合わされるのは同じ会社のOL仲間のゆいか。ゆいかは恋愛に興味ゼロだが、大のミステリマニア。合コン相手が出会った不思議な謎や、社内で起きた事件など、話を聞いただけでランチの間に真相を見抜く──という安楽椅子探偵もの。
・連作短編集の形式で、今回は5話を収録。合コン相手が小学校時代、構内にお稲荷さんの社があったのをはっきり覚えているのに、同窓会で会った同級生はみんなそんなものはなかったという謎だったり、百貨店のSNSに犯罪予告めいた嫌がらせ投稿があったりといった謎や事件を、ゆいかさんがたちどころに解明する。
★読みどころ1)ランチ合コンという設定の巧さ
これは1巻からシリーズ全体に共通した魅力だが、夜の合コンと違ってランチだとお酒が入らない・時間が短いという制約がある。お酒が入ることでのトラブルも回避できるしだらだら長引くこともない。短い時間で要点を絞った会話ができるのでミステリ向き。さらに、毎回合コン相手が変わるので、謎もバラエティに富んでいる。エリート会社員が巻き込まれた事件から飲食店の事件まで多種多様。探偵役が若いOLであることで、社会で女性が向き合う問題が織り込まれることもあるし、麗子とゆいかの、女子バディものの面白さもある。何より、毎回合コンのお店が代わり、そのランチメニューの描写が絶品!あらゆるジャンルの料理がコースで紹介され、読んでいてお腹が空くこと請け合い。つまり、設定の面白さ、謎のバラエティ、女性の問題、そして料理の描写と一冊で四度美味しいシリーズ。
★読みどころ2)第3巻はこれまでと大きな違いがある。
第一話はまだふつうにランチ合コンをしているが、第二話では店選びに悩むようになる。密を避けられるか、換気は充分か──つまり、物語の中でコロナ禍に突入する。第3話はついにリモート飲み会に変わる。これまでの2巻は「お決まりのパターン」だったがここでそれが変わった。社会を反映しているとともに、お店で対面の合コンとは違ったリモート合コンならではの謎解きが味わえる。コロナ禍でかつての生活様式が続けられなくなり、小説でも飲み会や旅行の場面をどう描けばいいのか作家さんたちは悩んだと思うが、これは実に上手く現実を取り入れた。
・謎解きのサプライズもたっぷり、美味しい料理もたっぷり。ぜひ1巻から読んで欲しい。
水生大海『ランチ探偵 彼女は謎に恋をする』
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