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第166回直木賞受賞作 米澤穂信『黒牢城』

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★内容紹介
・主人公は黒田官兵衛と荒木村重。天正六年、織田信長に謀反した荒木村重を翻意させるため、織田方の使者として黒田官兵衛が有岡城に派遣された。しかし村重は官兵衛の説得を拒否、官兵衛を拘束して一年もの間、土牢に閉じ込めた。作者はこの史実をもとに、籠城長引く有岡城内で四つの事件(フィクション)が起きたという話をつくり、それを官兵衛が土牢にいながらにして解き明かす、という「名探偵・黒田官兵衛」を誕生させた。
・その架空の事件は、処分保留の人質が密室で殺されたとか、合戦のあとでとってきた誰のものかわからない複数の首の中から大将首を探す話など、いかにも本格ミステリ、論理的な謎解きミステリ。城主である荒木村重はなんとか事件を解決しようとするが真相がわからず、知恵者で知られた黒田官兵衛に相談するというパターン。
★読みどころ1)面白い仕掛けがある
だが、架空の事件のミステリだと思って読んでいくと驚く。荒木村重は籠城長引く有岡城内から、家臣や民百姓を見捨ててひとりで逃げ出したという有名な史実がある。官兵衛が四つの事件を解くと、なぜ村重が城から逃げたのかがわかる。フィクションの謎解きミステリを楽しむうちに、本当の歴史の謎が解かれる。
★読みどころ2)領主とは何か、戦国とは何かというテーマ
有岡城の籠城戦は一年に及んだが、頼みの援軍である毛利は来なかった。戦国時代は小さな国衆が、どの武将につくか観察していた時代。そこに忠誠心はない。ついた武将がダメだとなったらすぐに見捨ててよそにいく。だから村重は家臣の信頼を損ねるようなことはできなかった。だが、戦況が変わる中、村重はだんだん追い詰められていく。そんな村重を家臣はどう見ていたのか、場内に暮らす民百姓はどう感じていたのかが、四つの事件を通して少しずつ見えてくる。そこから、戦国時代とはどういう時代だったのか、領主には何が必要なのかを描いた。
・昨年はこの作品の他にも、垣根涼介さんが備前の宇喜多秀家の話を書いたり、天野純希さんが三木城の別所長治の話を書いたり、吉川永青さんが鳥取城の山名豊国を書いたりと、織田と毛利の間でどちらにつくかという中国地方の武将の駆け引きや戦いをテーマにした歴史小説が多く出た。大国の顔色を伺う日本を象徴しているのかも?
第166回直木賞受賞作 
米澤穂信『黒牢城』
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