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石川寛監修『すごろくで学ぶ安政の大地震』

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★内容紹介
・幕末の安政元年から二年にかけて、関東から九州までの広い範囲が大きな地震に見舞われた。その様子を伝えるかわらばんが各地で出たが、大坂で出たかわらばんの中に興味深いものがある。関東から九州まで36箇所の地名を挙げ、その場所の地震の様子を絵で表しているのだが、それがすごろく形式になっている。
・大坂のかわらばんなので、振り出しとあがりは大坂界隈。振り出しは大坂の神社で地震が発生する前を描いている。そこから地震発生時の大坂が描かれ、各地をめぐって尾州名古屋、志摩の鳥羽、尾張の宮(今の熱田)、桑名、東海道の鳴海宿、静岡の掛川などこの地方も登場する。
・その一コマずつを紹介し、その絵が何を表しているのかを解説。他のかわらばんや史料からより詳しいその場所の地震の様子も解説される。たとえば宮・桑名のコマでは津波に家が飲み込まれ、人々が山をかけあがる様子が描かれており、そこに「大荒れ大荒れ」という文字が入る。そして解説文には、宮と桑名が東海道の海路で七里(28km)あったという地理的な説明から、熱田側では津波は浜鳥居(現存せず)まで波が迫り、人々が熱田神宮に避難したこと、熱田神宮は無事だったが、近くの奉行所や浜御殿は倒壊したこと、津波は堀川を遡って尾頭橋まで達したことなどが解説される。また、当時の東海道が陸路ではなく海路を使ったのはこの周辺の地盤が弱かったからで、それは養老断層が原因などなど、歴史から地理地学にいたるまで親切な解説がある。
・尾州名古屋の絵を見てみると、建物は倒壊してないが、その建物につっかい棒がしてある。その前を、提灯を持って見回りをしている人が描かれ、「諸入用」と文字が書かれている。これは、被害は少なかったがいろいろお金がかかる状況だったということ。片端や広小路のお寺の門前などに避難小屋を建てて、避難生活を送っていたと解説されている。
・このように、各地の様子がつぶさに説明され、とても興味深いのだが、何よりこの本の売りは、付録に、ほぼ原寸大のそのかわらばんがついてくること。振り出しのつぎは「大坂ゆり出し」で揺れ始めたときの大混雑が描かれ、布団をかぶって逃げる人や、お年寄りを背負って逃げる人などがいる。4コマめは銭湯から裸で逃げる人々。その次は倒壊した建物の横で何かを運ぶ男性が描かれ「何が銭もうけのたねになるやら」と描かれている。そういうコマをひとつずつ見て解説を読むだけでも楽しいし、すごろくらしく、ここに止まるとペナルティ、というわくもある。
・見て楽しく、読んでためになる一冊。
石川寛監修『すごろくで学ぶ安政の大地震』
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