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豊田巧『信長鉄道』

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★内容紹介
・物語の始まりは1987年(昭和62年)の3月31日の深夜の、国鉄の名古屋工場。国鉄がJRに変わるまであと15分となった時、最後まで分割民営化に反対していた名古屋工場保線区の職員たち10名は、工場の詰所に残って国鉄最後の夜を過ごしていた。ところが0時になった瞬間、詰所は不思議な白い光に包まれ、職員たちは気を失う。そして目が覚めたとき、10人の職員は工場ごと、永禄3年(1560年)に飛ばされていた。
・そこに、この土地の領主である織田信長の命令で武士が偵察にやってくる。職員たちのリーダーである保線区機動検査長の十河(そごう)はとっさに、国鉄という国から漂流してきたもので、国鉄の国の技術を使って砦を作った、しばらくここにとどまる許可が欲しいと願い出る。その願いは通ったものの、食料も当時の金もなく、生きていくためには信長に役に立つと思わせねばならない。
・今が永禄3年と知った十河たちは、まもなく桶狭間の闘いがあることに気づく。そこで、国鉄の技術と、一緒にタイムスリップしてきた工場内の機関車や線路、資材などを使って信長に協力することを思いつく。熱田から桶狭間まで線路を敷いて、武士たちを運んだらどうだろう? 果たして国鉄マンたちは、戦国の世で何ができるのか、という、いわば「戦国自衛隊」の国鉄版。
★読みどころ1)リアルな国鉄の描写
著者の豊田巧さんは鉄道ものを専門にする作家。ゲームの原作から児童書、ライトノベル、一般小説に至るまで幅広く、鉄道の知識を存分に生かした作風が特徴。この小説でも、昭和62年当時に名古屋工場に存在した機関車や客車や資材を詳しく描写し、国鉄好きの鉄道ファンにはたまらない描写が随所にある。
★読みどころ2)歴史の中に投入される国鉄の描写
当時の物流や道路事情、土木技術がどんなものだったかが詳しく語られ、なるほどその方法なら桶狭間まで線路が敷けるかもしれないという説得力がある。その上で、実際の歴史とうまく辻褄が合うように鉄道が物語の中で生きてくるのが読みどころ。たとえば秀吉の墨俣一夜城の建設に鉄道が活躍し、それなら確かに一夜で城が作れる、と思えてくる。
・軽めにサクサク読めるライトなエンタメだが、読む人が読めば鉄道描写と歴史描写はガチ、というのがわかる楽しい一冊。
豊田巧『信長鉄道』です。
ハルキ文庫から836円で販売中です。
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