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大門剛明『シリウスの反証』

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★内容紹介
・物語の主人公は弁護士の藤嶋翔太。彼は冤罪被害者の救済に取り組む「チーム・ゼロ」という団体のメンバー。「チーム・ゼロ」は弁護士や学者などのスペシャリストで構成され、難関と言われる再審無罪を勝ち取るなぞ、実績を積んで注目されていた。そんな「チーム・ゼロ」に、受刑者から無罪を訴える手紙が届く。それは平成8年に郡上八幡で起きた一家四人惨殺事件の犯人として収監されている宮原死刑囚からのもの。
・その事件について藤嶋たちが調べると、自供内容に不自然な点があり、警察の誘導が疑われた。しかし、凶器に残されていた指紋が宮原のものと一致し、有罪が確定。警察による自供の誘導などは今更証明できない上、指紋という決定的な証拠を覆すのは困難。これは再審は難しいとして依頼を断ろうとした「チーム・ゼロ」だったが、チームのリーダーである東山弁護士は、宮原は無実だと信じ、受けることを決めた。藤嶋たちは郡上を訪れ当時の状況を洗い直し始めるが、そんな時、すべてをストップさせるような大きな事件が起きて──。
★読みどころ1)展開が二転三転する面白さ
再審請求とは、有罪が確定したあとで、無罪とするべき明らかな証拠を発見したとき可能となる。たとえば1990年に起きた足利事件では、発生から20年後に、DNA鑑定技術が進化したことで当時は同一とされたDNA型が、実は違っていたことが判明した。それくらい強力な無罪の証拠がなければ受け入れられない。この物語では、指紋という動かぬ証拠がある上、事件発生から四半世紀が過ぎており失われた物証も多い。指紋を超える証拠をどう見つけ出すのかが読みどころ。そういう視点があったか!と驚かされる。特に終盤、残りページがもう少ないのにこのあとどうなるの、というところからの怒涛の展開は圧巻。
★読みどころ2)冤罪の可能性を巡る人間模様
弁護士の藤嶋だけでなく、当時、宮原を起訴した検事や、死刑を言い渡した裁判官の話も登場。もしも冤罪だったら自分が無実の人間の25年を奪ってしまったことになる。当時、指紋の鑑定をした技官も、自分の鑑定には自信とプライドを持っている。彼らは、もし間違いならどうするのか。間違いと認めることができるのか。また、宮原をずっと犯人だと思って憎み続けてきた遺族や、死刑囚の息子として生きてきた子供の気持ちは、どうなるのか。ひとりひとりに葛藤があり、それが物語を思わぬ方向に動かす。
・ミステリとしても意外な真相が用意され、サプライズと人間ドラマに満ちた一冊。
大門剛明『シリウスの反証』
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