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今村翔吾『塞王の楯』

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★内容紹介
・物語の始まりは越前の一乗谷。織田信長の一乗谷攻めで、両親と妹を失った少年、匡介が主人公。匡介は逃げる途中に、源斉という男に助けられる。源斉は穴太衆(あのうしゅう)と呼ばれる石工(石組み職人)で、飛田家という一家の頭だった。匡介の石を見る才能に気づいた源斎は彼を仕込み、周囲も匡介を後継者と見なすようになる。
・匡介は石組みの仕事をする上で、ひとつの目標があった。それは最強の石垣、絶対に落とされない石垣を組むこと。戦い合う両陣営がともに決して落ちない城を持てば互いに手出しができない。そうすれば戦はなくなる。戦のない世を石垣で作りたい、と考える。そんなとき、近江の京極高次の居城、大津城の改修の仕事が来る。匡介は自分の夢のためにも絶対落ちない石垣を組もうとする。
・タイトルの「塞王」とは、穴太衆が信心している道祖神の名前。これは死後の世界にあるという「賽の河原」を守る神のこと(賽の河原では石積みが行われる)。つまり、塞王の楯とは、石組職人が作る最強の石垣のことを指す。
・一方、もうひとりの重要人物が登場する。それは国友衆と呼ばれる鉄砲職人の国友彦九郎(げんくろう)。彦九郎は、もしこの世に1日で百万の兵を殺せるような大砲や鉄砲があれば、そしてそれを両陣営が持てば、互いに怖くて使えなくなる。その抑止力で、二度と戦はおきなくなる。戦のない世の中を作るため、自分は鉄砲を作ると語る。つまり、石垣が「最強の楯」なら、こちらは「最強の矛」。そして大津城を攻めようとしている石田三成は、彦九郎に鉄砲作りを依頼する。
・ついに、大津城で最強の石垣と最強の鉄砲の戦いが始まる。大群に囲まれた大津城。はたして勝つのはどちらなのか?
★読みどころ1)石組みという作業の興味深さ
城の石垣には、これほどまでにいろんな技術や知恵が使われていたのかということに驚く。たとえば戦の最中に突貫で石垣を積み上げる場面があるが、目の前を矢や銃弾が飛んでくる中での石積みは迫力満点。さらにその中で、どんな石をどう組めばどんな策がとれるかなどを考えながら組むので、頭脳戦の面白さも味わえる。
★読みどころ2)戦国時代の職人の姿
穴太衆は近江の比叡山山麓発祥の職人集団、鉄砲作りの国友衆は現在の滋賀県長浜市あたりが本拠地。近江だからこそ成り立つ、極めて珍しい戦国職人小説。
★読みどころ3)平和を求める姿。
匡介も彦九郎も「戦のない世を作りたい」という思いは同じ。なのに、どうして正反対の方法をとるのか。争いを止める方法はないのか、というテーマが根底に込められている。すさまじい合戦描写のあと「塞王の楯」という言葉の本当の意味がわかるくだりは圧巻。
・職人の目から戦国を描いた、とてもエキサイティングな歴史小説。
今村翔吾『塞王の楯』
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