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司馬遼太郎『燃えよ剣』

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・原作は1962年から64年にかけて連載された、司馬遼太郎の代表作のひとつ。
 幕末を舞台に、新選組副長・土方歳三の生涯を描いたもの。
★内容紹介
・若き日、武蔵国多摩で農家の息子として育った歳三は、土地の言葉で「バラガキ」と呼ばれる不良少年だった。その時代に始まり、親友の近藤勇や沖田総司らと一緒に京にのぼって新撰組を結成したこと、幕府が倒れても降参せずに鳥羽伏見から会津、そして箱館戦争で銃弾に斃れるまでを描いた作品。
★読みどころ1)今の土方歳三のイメージを作った小説。
本書に描かれる土方歳三は、剣は試衛館道場で目録をとる腕前、見た目は秀麗な優男、頭が良くて喧嘩となれば小狡い作戦をどんどん考えつき、一方で、いい女がいるととりあえず夜這いをかけて惚れさせる。新撰組を作ってからは、隊の規律を守らせることと近藤勇という局長の格を上げるために、副長の自分は徹底して悪役・怖い上司に徹する。これはもちろん史実もあるが、鬼の副長という全体的なイメージは司馬遼太郎が確立させたもの。新選組は大正時代までは悪役とされ、昭和に入って子母澤寛の『新選組始末記』などで再評価が始まったが、司馬遼太郎の『燃えよ剣』と『新選組血風録』で一気に、につながる人気が沸騰した。
★読みどころ2)小説ならではの脚色
原作には史実には存在しない架空の人物がふたり登場する。ひとりは土方の恋人であるお雪。厳密にはもうひとり土方が思いを寄せる女性も小説には出てくるが、お雪は土方の運命の人として、物語の最後まで登場する。もうひとりは剣士の七里(しちり)研之助。江戸にいた頃に出会って以来、土方の剣のライバル、宿敵として京都まで追ってくる。この架空の人物二人を作ったことで、土方の人間味と、剣豪小説としての面白さも加えている。このふたりは映画にも出てくるので、物語にどうかかわってくるか要チェック。
★読みどころ3)その後の歴史研究や映画と比べてみる
50年以上前の小説なので、その後判明した史実とは異なる部分がたくさんある。また、このあと多くの新選組小説やドラマが作られ、それぞれの隊士の印象もこの小説とは変わってきた。今この原作を読むと、「あの隊士がこんなに悪く書かれている!」と驚くかもしれない。さらに50年以上前の小説を今映画にすることで、その後にわかった史実をどう扱っているのかなどを比べてみるのも楽しい。
・歴史解釈は古くても、今につながる新選組人気の元となった一冊。
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