多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

岩井圭也『この夜が明ければ』

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★内容紹介
・舞台は北海道の港町。25歳の青年、工藤秀吾は、その港町の漁協で、カラフトマスを捌く季節バイトで働いている。季節バイトとは繁忙期のみの雇用で、食住が保証されるもの。バイトには他に20代から30代の6人の男女がいた。次第に仕事にもなれ、仲間とも打ち解けあってきたある日、リーダー格の中野大地と最年少の女性・佐藤真理が、一緒に町に遊びに行った。ところが帰ってきたのは真里だけで、夜になっても大地が帰ってこない。
・真理は町で別れたと言い、こんなに遅くなるのは変だから秀吾と真理のふたりが探しに行くことに。すると砂浜で大地が血を流して死んでいるのを発見する。秀吾は慌てて警察に電話しようとするが、突然真理が秀吾のスマホを奪って宿舎に帰ってしまった。わけがわからず秀吾も宿舎に戻り、他のメンバーに事情を話してあらためて警察に通報しようとするが、なんと6人中4人が通報に反対する。
・さらに、大地の荷物からは脅迫状らしきものが発見され、他殺の疑いが強まる。にもかかわらず、バイトのメンバーたちは警察に届けることを頑なに拒む。実はそこにはそれぞれ、人には言えない秘密を抱えていた──。
★読みどころ1)メンバーたちの秘密
なぜ警察に来られると困るのか、はじめはこの中に大地を殺した犯人がいるのではと互いに疑うが、殺人犯ではないと証明するため、皆、自分の秘密を語り始める。それは何かはここでは言えないが、全員何かから逃げていることが共通している。その理由はいずれもまさに現代の社会問題を反映したような出来事で、しかも、彼らが逃げるしかない状況にまで追い詰めた側は、それが間違いとは思っていない。逃げた側の物語を読んでいるうちに、自分は彼らを追い詰めた側の人間ではないかと自分を振り返ってしまう。正しいこととは何か、正しければいいのかという問いを読者に突きつけてくる。警察に届けることを6人中4人が反対したと言ったが、残る2人が何なのか、というのが実は大きなポイント。
★読みどころ2)それがたった一夜の物語であるということ。
朝になれば大地の死体は誰かに発見され、遅かれ早かれ警察は宿舎に来るはず。それまでに全員、秘密を語り合ってこれからどうするかを決めなくてはならない。つまり、その日の夕方までは和気藹々と一緒にバイトをしていたメンバーが、一夜にしてその仮面がすべて剥がれてしまうというサスペンスの面白さがある。
・正しさの意味を問う、スリリングなミステリ。

岩井圭也『この夜が明ければ』
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