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リチャード・オスマン『木曜殺人クラブ』

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★内容紹介
・舞台はイギリスケント州の郊外にある高級リタイアメント・ビレッジ、つまり退職者やその夫婦が暮らす高齢者村。老人ホームというわけではなく、広い敷地の中にアパートやテラスハウスがあって、一定の独立性を保って住めるコミュニティ。そこの集会室で毎週木曜、木曜殺人クラブというサークルの集まりが開かれている。
・設立者はかつて警察官だったペニーと、エリザベスというふたりの女性。ペニーが退職時にこっそり持ち出した未解決事件ファイルに目を通し、探偵の真似事をして楽しむクラブ。まもなくペニーは病で末期療養施設に移ったが、他に元精神科医、元労働組合のリーダー、元看護師といったメンバーが加入し、クラブの活動は続いている。
・そんなある日、村の経営者のひとり、トニー・カランが自宅で何者かに撲殺されるという事件が起きた。その直前に、トニーが共同経営者であるイアン・ヴェンサムと口論しているところを木曜殺人クラブのメンバーが目撃。イアンは敷地にある墓地や庭園を再開発しようとしており、それに反対する住民との間にトラブルをかかえていた人物。さらに、自らの収益を増やすため、共同経営者のトニーの首を切ろうと密かに画策していたことが判明。木曜探偵クラブのメンバーはイアンに動機ありと考えて真相究明に乗り出す。
★読みどころ1)とにかく賑やかで楽しい老人探偵団
本物の殺人事件だ!と意気込む木曜殺人クラブが実に楽しい。警察の情報を手に入れるため、ある突拍子もない手を使って、以前高齢者村に防犯講習に来てくれた巡査を味方に引き込んだり、警察の聞き込みにも話は脱線するし、思い込みは激しいし、物忘れはするし。かと思えば思わぬ機転と洞察力を見せて警察と読者を驚かせる。コミカルで元気で笑える。
★読みどころ2)楽しい中に見え隠れする、人生の道のり
ユーモラスな語り口の中に、ときおり、これまでメンバーたちが歩いてきた人生が見え隠れする。過去に対する後悔とか、実績に対する自信とか、あるいは次第に衰えていく体と心への諦めとか、人生が残り少ないことに対する自覚とか。時間が残り少ないことを承知していて、その上で今、精一杯楽しむ木曜殺人クラブのメンバーがとても逞しい。事件の背後にも、関係者の過去や人生が深く関わっていて、「自分が通ってきた道のりにどう向き合うか」を問いかけてくる。
・イギリスミステリの王道を行く謎解きのサプライズと、人生の黄昏にさしかかった登場人物たちの人物描写の両方が楽しめるミステリ。
リチャード・オスマンの『木曜殺人クラブ』
早川書房から2310円で販売中です。
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