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小松左京『日本沈没』

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・1973年に出た、日本SF史上最大のヒット作。
・なぜ今『日本沈没』かというと、来月からのCBCの日曜劇場が「日本沈没」だから。ドラマは現代が舞台、主人公も原作にはないオリジナルキャラとのことで原作を大きく改変しているらしいので、ドラマが始まる前に、まずベースとなった原作を読んでみてほしい。
★内容紹介
・原作は1964年から連載が始まり、9年がかりで完成した。原作の舞台は197X年で、執筆時から数年先の近未来という設定。
・197X年、小笠原諸島の端にある小さな島が、突然、一夜にして海底に沈んだ。調査に向かった学者たちは、海底に不気味な亀裂と奇妙な潮の流れを発見した。続いて伊豆半島で地震と噴火が発生、学者たちは2年以内に日本全土が海底に沈むと予測する。その予測を受けた政治の混乱と学者たちの懸命の調査、そして庶民のパニックを当時最先端の詳細な科学情報を交えて圧倒的なリアリティで描いた不朽の名作。
★読みどころ1)執筆当時のテーマ
連載を始めた1964年は前の東京オリンピックの年。小松左京は、戦争から19年しか経っていないのに、高度経済成長だオリンピックだと、ちょっと浮かれすぎではないか、あの「国がなくなるのでは」という危機感をもう忘れてしまったのか、だったらフィクションの中で、もう一度国を失う危機に直面させてやろうという気持ちで書いた。ところが刊行された1973年は、はからずも高度経済成長最後の年となり、オイルショックが起きる。高度経済成長のツケとも言うべき、公害病が日本各地で社会問題化。さらに前の年に「ノストラダムスの大予言」が大ヒットし、一気に終末ブームが来た。そこに、この「日本沈没」がピタリとハマった。連載開始時、そして出版時が、ともに戦後日本の分岐点となっている。今は浮かれてるのか、それとも終末めいた閉塞感の中にあるのか(両方かな?)そんな当時の歴史を重ねながら読むと、出版当時とは違った感慨が持てる。
★読みどころ2)50年前に書かれた近未来の描写
ここに書かれた近未来はすでに過去なので、実現したものとしなかったものがわかる。作中に未来のこととして書かれた新東京国際空港や関空などは実現し、この時点でリニアモーターカーの工事が始まっているのは現実の方がかなり遅れている。そういう未来的な描写がある一方で、新幹線に食堂車が残っていたりという面白いギャップも。今だからこそ楽しめる読み方ができる。
・ドラマの前にぜひ、小松左京さんが物語に託した想いを感じてほしい。

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