多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

鯨井あめ『アイアムマイヒーロー!』

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★内容紹介
・主人公は大学生の敷島タカナリ。自分に何の希望も持てず自堕落な日々を送っている。ある日、小学校6年生のクラスの同窓会が開かれ、それに参加するものの、仲の良かった友達が充実した日々を送っているのを見ていたたまれなくなり、店を出た。帰ろうと駅の待合室にいたところ、ホームから女性が転落するのが目に入った。慌ててホームに出たが、パニックになってしまい何もできない。このままでは落ちた女性を見殺しにしてしまうのでは──と思った瞬間、目の前が真っ白になり、気がついたときにはどこかわからない草の上で、誰かわからない子供の姿になっていた。
・そこに別の少年が現れて、タカナリに「見つけた!」と声をかける。どうやら自分はこの少年の友達で、かくれんぼをしていたらしい。ところがそこでタカナリは衝撃の事実に気づく。彼に声をかけた少年こそ、小学校6年のときのタカナリ自身だった。そしてそのタカナリ少年は、自分のことを「カズヤ」と呼ぶ。一緒にかくれんぼをしていた当時の仲良し三人組も、自分のことを「カズヤ」と呼び、当たり前のように友人として接してきた。
・夜になっても帰る場所のない「カズヤ」は、偶然、しっかりものの学級委員、渡来さんと会う。ダメ元で状況を話すと、とりあえず家にかくまってくれることに。さて、これからどうなる?
★読みどころ1)消したい過去と向き合う描写
小学校時代のタカナリは、ヒーロー願望が強くて自己中心的、周囲の人の気持ちなどまったく考えずに我を通すタイプ。ところが中学、高校とだんだん自分の思い通りにいかなくなり、理想より格下の高校に入ったり、意中の大学に落ちたりし、今の自堕落な大学生になってしまった。こんなはずじゃなかった、人生を最初からやりなおしたい、とずっと思ってきた。そんなタカナリの前に、自己中だった小学生の自分がいるわけで、自分を客観的に見てイライラする様子が様子がとてもリアル。同時に、自分が消したい過去の現場に他人としてタイムスリップしたら何を思うか、つい想像してしまう。
★読みどころ2)先の見えないストーリーの面白さ
幸いGW中だったため学校がなく、「カズヤ」はタカナリたち仲良し三人組と一緒に過ごす。ところがそんな折り、小動物が殺されるという事件が連続して起き、警察沙汰に。そんなことはタカナリの記憶にない。過去が変わってきている?どういうことなのか、犯人は誰なのか、そして「カズヤ」はタカナリとして現代に戻れるのか、一歩先がわからずドキドキしながら読める。そして意外な真相と見事な結末にびっくり!
・どんなに辛い過去や嫌な歴史であっても、その過去があったから今の自分がある。ということは今の自分が未来の自分を作るんだ、というメッセージが伝わってくる一冊。

鯨井あめ(くじらい・あめ)さんの『アイアムマイヒーロー!』
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