多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

近藤史恵『たまごの旅人』

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★内容紹介
・主人公は新米旅行添乗員の遥。小さい頃から外国への憧れが強く、趣味と実益を兼ねる仕事として旅行添乗員になる。けれど好きなことを仕事にするのは、なかなか大変で……。
・五話の短編が収録されており、遙が添乗した五つの海外旅行がそれぞれ語られる。
第一話はアイスランド、オーロラ観測ツアーや間欠泉など壮大な自然公園を回る。
第二話はクロアチアとスロベニア。ヨーロッパ最大の鍾乳洞を見学する。
第三話はパリ。ルーブル美術館やオペラ座など、これぞパリ!という名所を回る。
第四話は中国。西安から北京をめぐり、中華料理を楽しみ、最後は万里の長城。
どれも現地ならではの情景や食べ物や文化の情報がふんだんにあって、一緒に旅をしている気分に。だがメインは観光情報ではなく、遙が添乗するツアーの参加者たちがもたらすトラブルの方。どのツアーにもちょっと困った人がいて、その度に遙は振り回される。
・そして第五話の舞台は2020年。新型コロナウィルスで海外旅行の添乗員という仕事がなくなってしまう。失業状態になってしまった遙が何を考え、何をしたかが綴られる。
★読みどころ1)非日常だからこそ浮き彫りになる人間性の描写
たとえば定年退職した父親と三十代の娘が一緒に参加しているツアーで、父親はやたらと人前で娘を下げるようなことばかり言う。また、行った先々で文句ばかり言う人もいる。添乗員が若い女性だからか、やたらといばったり怒鳴ったり命令したりする人もいる。飛行機会社のミスで荷物が間に合わなかったり、現地の天候が悪かったりという添乗員の責任ではないことまで責任を追求してくる人もいる。そんな行動がツアーの雰囲気を悪くしていることに本人は気づかない。そんな人は普段からそういう行動をしているんだろうなということが浮かび上がってくる。そういう人を物語の中で客観的に見ることで、自分はどうだろうと我が身を振り返ることができる。
★読みどころ2)それでもやっぱり旅行は楽しい!
観光地や自然や日常の風景など、日本とは違う文化が次々と紹介されて読んでいるだけで旅行している気持ちになる。ツアー客の中には、日本と違うことを楽しめなかったり、違うことが理解できない人もいる。物事を楽しめるかどうかは、積極的に楽しもうとするかどうかにかかっている、ということがよくわかる。
・自由な旅行ができるようになるまでにはまだ時間がかかるだろうが、それまでは紙の上での海外旅行を楽しんでほしい。1700円で世界が巡れます。

近藤史恵『たまごの旅人』
実業之日本社から税込1760円で販売中です。
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