多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

万城目学『鴨川ホルモー』

[この番組の画像一覧を見る]

★内容紹介
・2006年に出た万城目学のデビュー作にして出世作です。
・主人公は二浪して京都大学に入った安倍。彼は葵祭の日に、「京大青龍会」という名のサークルから勧誘を受ける。入る気はなかったがタダ飯目当てに新歓コンパにだけ参加。するとそこにいた同じく新入生の京子に一目惚れしてしまい、京大青龍会が何のサークルなのかよくわからないまま入部することになった。
・当初はただのレクリエーションサークルだと思われていた青龍会だったが、その実態は、同じく京都にある三つの大学を相手に「ホルモー」という千年の伝統を持つ競技で戦うサークルだったことが判明。その「ホルモー」とは1チーム10人の団体戦。昔から京都にいるという体長20cmくらいのオニをひとりあたり100匹、チームで千匹使って戦わせる。相手のチームの鬼が全滅するか、降参を宣言させたら勝ち。安倍たちは半信半疑だったが、訓練と儀式を通して実際にその鬼たちの姿が見えるようになり、否応なく戦い戦いを始めることになった。
・ところが安倍がそもそもサークルに入るきっかけとなった京子が、同じサークル仲間の芦屋と付き合っていることが判明。しかも京子と安倍の仲を誤解した芦屋から、安倍が殴られてしまうという事件が起き、京大青龍会を二分する騒ぎとなった。果たして京大青龍会はどうなるのか?
★読みどころ1)スットンキョーな設定で描かれた王道の青春小説
オニとか戦いとかホルモーとかなんだこれ、と思うが、ストーリーは大学生の恋愛や友情、サークルの分裂だったり、勝負に勝つというスポーツ的な面白さだったりと意外にも真正面からの青春小説。ひとつのことに打ち込む若者ならではのエネルギーや、恋に敗れて引きこもってしまったり、他人の気持ちが理解できなくて傷つけてしまったりという人間模様が、ユーモラスな中に実はしっかり描かれている。
★読みどころ2)なぜホルモーなのか。
ただ、読みながらどうしても納得できないことがふたつある。そういう青春のあれこれは別にホルモーとか鬼とか出さなくても、どんなスポーツでも描けるであろうこと。もうひとつは、各チームにいる女性メンバーは、最初から戦闘担当ではなく補給部隊と決められていること。21世紀の小説でそんな古臭い役割分担なんてある?ところが最後まで読むと、なぜホルモーなのかがわかるし、女性の描かれ方も大逆転がある。
★読みどころ3)歴史を知ってると面白さ倍増
このまま読んでも充分楽しいが、実は京都の歴史を知っているといろんなパロディが入っている。特に登場人物の名前を見ると、歴史好きな人には元ネタがわかって面白さが倍増する。
・さまざまな楽しみ方ができるエンターテインメントの傑作。

万城目学『鴨川ホルモー』
角川文庫から616円で販売中です。
関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報