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谷津矢車『吉宗の星』

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★内容紹介
・八代将軍、徳川吉宗の一代記。
・吉宗は紀州藩主の三男だったが、母の身分が低いため家中で徹底的に差別されて育った。五代将軍綱吉に目をかけてもらい何とか扶持は得たものの、寺に入れられそうになったり、はては兄の家督を脅かさぬよう念書をとられたり。支えは優しい母、師と仰ぐ鉄海和尚、そして乳兄弟でもある唯一の家臣・星野伊織だけだった。
・ところが兄が相次いで急死したため、吉宗が藩主の座につくことに。江戸城に上がった吉宗は大奥の問題を解決するなどして手腕を示す。そして、たまたまライバルだった尾張藩主が亡くなったため、吉宗は八代将軍になった。
・といっても、紀州の兄にしろ尾張の藩主にしろ、そう都合よく死ぬわけがない。藩主になってからの活躍も、そうとんとん拍子にいくわけもない。実は吉宗の知らないうちに、腹心の家臣・星野伊織が周到な準備と策略により、吉宗の後押しをしていた。しかし物語中盤、その伊織が何者かに殺されてしまう。伊織は吉宗に「天下をお取りください」と言い残して死ぬ。そこからは吉宗がひとりで立ち向かわなくてはならない──。
★読みどころ1)吉宗が将軍になるまでの謀略の数々
星野伊織のダークヒーローっぷりがかっこいい!吉宗が出世の邪魔者を排除していくという物語はこれまでもあったが、他のさまざまな歴史上の出来事を絶妙に配し、その謀略にさらに深みと凄みを与えている。
★読みどころ2)従来の徳川吉宗像を覆す、孤独で切ない将軍の描写
吉宗といえば暴れん坊のイメージが強いが、本書の吉宗は心の支えだった伊織と母を失くしたあと、自分は何のために将軍でいるのかがわからなくなる。だが、将軍でいることは伊織が望んだことなので、その約束をやぶるわけにはいかない。この物語は、人の心のよりどころとは何かを描いたもの。大きな野心もあるだろうが同時に、「この人を喜ばせたい」「この人をがっかりさせたくない」という個人的な些細なところに潜んでいるのではないか。そしてそんな存在は、きっと誰もが持っているはず。
★読みどころ3)尾張の宗春公の描写
吉宗というと、だいたい歴史小説では尾張の徳川宗春と敵対関係として描かれる。ところが本書ではふたりは実にいい関係を築くし、宗春はめちゃくちゃかっこいい!暴れん坊将軍のイメージを覆しただけではなく、敵とされてきた相手との関係も覆してみせた。
・尾張の人にも安心して勧められる吉宗の物語。

谷津矢車『吉宗の星』
実業之日本社から1870円で販売中です。
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