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堂場瞬一『沈黙の終わり』(上・下)

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★内容紹介
・ふたりの新聞記者が主人公のミステリー。
・ひとりは東日新聞の千葉の支局に勤める、定年間際の松島。千葉県野田市の江戸川沿いで、七歳の女の子の遺体が発見され、その取材を始める。
・もうひとりは埼玉県の支局に勤務する二十代の事件記者の古山(ふるやま)。千葉の事件を聞いて、自分の担当エリアでも四年前に女の子が行方不明になった未解決事件があったことを思い出す。それが千葉との県境、今回の事件と江戸川を挟んで500メートルも離れていないことに気づく。千葉支局の松島に連絡を取り、ふたりで調べてみると、千葉・埼玉で江戸川沿いに、小学校低学年の女の子が行方不明もしくは殺害された事件が、1988年から現在までの33年間で7件も起きていたことが判明。しかも、そのすべてが未解決だった。
・すべて未解決であるにもかかわらず、取材してみると、事件解決への両県警の熱意がどうも薄いような気がする。さらに埼玉の古山の方には、県警の捜査一課長から取材をやめるよう圧力とも思われる言葉がかけられる。
・警察は何か隠していると判断した松島と古山は独自にこの連続事件を調べ始めるが──。
★読みどころ1)新聞記者のリアリティ
著者の堂場さんはもともと大手の新聞社で記者を長年務めた人。その経験から、地方の支局や警察との関係、情報提供者との交流や取材方法などがリアルに描かれる。さらに、人物描写がいい。定年間際の松嶋は少し前にがんを患い、今は寛解しているが無理はできない状態。若手の古山は独身の一人暮らし。東京本社への転勤が決まっていて、それまでに埼玉での取材をなんとか形にしたく、引越しの準備もままならない。それぞれの年代のサラリーマンが直面する問題をプライベートともともに細やかに描くので、新聞記者でなくても、登場人物を身近に感じられる。
★読みどころ2)記者の本文は何かというテーマ
大きな圧力が働いて事件がもみ消されていることがわかり、新聞社の中にもその筋はやばいからやめろという人も出てくる。だが松島と古山はあきらめない。圧力があろうが忖度を迫られようが、権力者の不正や隠蔽を独自に探り出すことこそメディアの仕事だ、という新聞社OBとしての鋭い批判が込められている。
・報道に携わる人にもぜひ読んでほしい一冊。

堂場瞬一『沈黙の終わり』
角川春樹事務所から上下巻それぞれ税込1870円で販売中です。
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