多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

サマンサ・ダウニング『殺人記念日』

[この番組の画像一覧を見る]

★内容紹介
・明るいホームドラマと猟奇的な連続殺人事件が融合したサスペンス
・物語の語り手は、郊外のクラブでテニスのコーチを務める「わたし」。39歳男性。不動産の仕事をしている妻のミリセントと、ふたりの子どもの4人家族。長男が生意気な年頃になったり、長女が常に携帯電話を手放さないのを叱ったり、お母さんは厳しいから欲しいものがあるときはお父さんにこっそりねだったりと、ごくごく普通の家族。だが実はこの「わたし」とミリセントの夫婦は連続殺人鬼だった!
・最初は半ば事故、半ば正当防衛のような形で人を殺してしまう。自首するか隠すか迷い、結局隠す方を選んだふたり。しかしふたりを怪しいと見た人物が恐喝に来たところを、今度ははっきり殺意を持って殺し、死体を隠した。そのときふたりはトキメキを感じてしまい、殺人にハマって、次の犠牲者を探すようになる。
・自分たちとは無関係の被害者を選び、作戦を立て、実行。3人目を殺している最中に娘の学校から「娘さんの体の具合が悪くなったので迎えに来て」と電話が入り、殺しはお母さんに任せてお父さんは学校に向かったりと、けっこうタイヘン。そして4人目を殺したあとで、話は意外な方向に進んで……。
★読みどころ1)前半のホームドラマの連続殺人のバランス
すごく素っ頓狂な設定に見えるが、この「わたし」とミリセントは二児の親として、極めて普通。生意気盛りの子どもに手を焼いたり、子供が道を踏み外さないか心配したり、それぞれの仕事もちゃんとしていて評判もいい。そういう人に裏の顔があるというのは殺人鬼まではいかなくても、意外と人は誰も暗い部分を持っているのではとぞっとさせられる。主人公が「わたし」で名前が出てこないのも、特定の誰かではなく、誰の心の中にも住んでいる「わたし」なのではないかと思わされる。
★読みどころ2)後半からの超意外な展開
この夫婦がこのまま連続殺人を続けていけるのか、それともばれて捕まるのか、途中、長男が深夜に出かけるお父さんを怪しむ場面もあり、そのへんからばれるのではなどなど読者の興味はそこに集中するが、まったく予想もしなかった展開になる。特に終盤はこの殺人鬼の「わたし」を応援したくなるような展開で、逆転につぐ逆転で実にスリリングなのに加え、その影に隠された真相はかなり怖い。
・楽しいホームドラマで、スリリングなサスペンスで、ぞっとする人間の闇をつきつけるとても贅沢な犯罪小説。
サマンサ・ダウニング『殺人記念日』
早川ミステリ文庫から税込1386円で販売中です。
関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報