多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

津村記久子『つまらない住宅地のすべての家』

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★内容紹介
・とある地方の小さな町の、とある路地に面した10件の家の物語。
・その10軒はそれぞれいろんな問題を抱えている。自治会長の家は妻が出ていってしまったがそれを周囲に隠している。母親が半ば育児放棄をしていて、小学生の姉妹ふたりで暮らしている家もある。ある夫婦は、息子が度々問題を起こすので、倉庫を改造して閉じ込めてしまうことを計画している。一人暮らしの青年は、自分を受け入れない世の中に復讐するため、女児誘拐を計画している。他にも、老夫婦のふたり暮らしの家や、母と息子ふたりの家、女性の一人暮らしの家、など。
・この10軒は、会えば挨拶する程度で交流はほとんどない。ところがある日、刑務所から受刑者が脱走したというニュースが流れる。その受刑者はこの近所が出身らしく、町内に近づいてきているらしい。そこで自治会長は夜間の見張りを立てた方がいいのではと提案した。道路に面した老夫婦の家の二階を借り、各家から人を出してローテーションを組むことになったのだが……。
★読みどころ1)交流のなかった各家に、少しずつ風穴が開く様子
一緒に見張りをしたからといってすぐに仲良くなるわけではないが、たとえば二階を貸すことにした老夫婦が、見張りの邪魔になる庭の植え込みを刈りたいと思う。だが老夫婦の手に余るので、向かいの一人暮らしの青年に頼む。青年はその日、女児誘拐を決行する予定だったが、それで予定の変更を迫られる……というふうに、玉突きのように、それぞれの家庭に少しだけ変化が起きる。
★読みどころ2)町内の人々の変化
風穴が開くと、それぞれの家庭の中だけで抱えていた問題を、外から見ることができるようになる。助けを求めたら意外となんとかなったり、違った見方ができるようになったり。それぞれの家で閉じてしまっていたのが少しずつ変わっていく様子がとても気持ちいい。
★読みどころ3)受刑者脱走事件の顛末
脱走事件は終盤になってこの町内でクライマックスを迎える。その場面がとても素晴らしい。
・近所付き合いは鬱陶しいことも多いが、やっぱりいいものだと思わせてくれる一冊。

津村記久子『つまらない住宅地のすべての家』
双葉社から税込1760円で販売中です。
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