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吉川永青『ぜにざむらい』

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戦国時代末期、蒲生氏郷に仕えた実在の武士、岡左内の物語。
・岡左内とは?
幼少期の名前は岡源八。無一文の孤児から1万石の城代にまで出世した人物。父は若狭国の小さな領主だったが、信長の若狭侵攻で滅ぼされる。そこからの子ども時代は史料がなく、18歳のとき蒲生氏郷の配下として名前が史料に残っている。
・蒲生家のあとは上杉家に仕え、合戦でいくつもの手柄を上げ、伊達政宗と戦って討ち払ったという武将だが、実は意外な逸話の持ち主。武士なのに利殖が得意でお金を貯め込み、趣味は畳の上に金銭を敷き詰めて、その上で裸になって昼寝すること。けれど単なる守銭奴ではなく、上杉家が資金繰りに困ったとき、財産を主君や同僚に貸し付け、さらに上杉家が徳川に逆らって石高を削られ、米沢に国替えされた時にはその借金の証文をすべて破り捨て、颯爽と上杉家を出たという話が残っている。
・これらの逸話をもとに、わかっていない部分を創作で補いながら岡源八の生涯を描いたもの。
★物語のあらすじ
・信長の攻撃で七歳で孤児になってしまった源八は、若狭の商人・高島屋久兵衛に拾われる。いつか信長に復讐したいという野望を持っていたが、まずは食べていかねばならず拾ってくれた久兵衛の指導で、金銭感覚を身に着ける。そして蒲生家に仕官した。
・侍でありながら金銭に執着し、同僚に金を貸しては利子を取る。時には町人に貸し付けることもある。そんな源八を軽蔑する者も多かったが、戦でも手柄を上げて着々と出世するが……。
★読みどころ1)こんな人物がいたのかという驚き
とにかく利殖が趣味だったというのは史実。金に執着するのは武士らしくないが、贅沢をするために貯めているわけではなく、金があれば有能な足軽も雇えるし、いい鎧や刀も買えるという合理的な使い方をする。周囲から文句を言われても気にせず、武士のメンツなども無視して、古い慣習に囚われずに思ったことをずばずば口にするので、とても気持ちがいい。およそ武士からぬ発想だが、作者はそれを、子ども時代に商人のもとにいたため武士としての教育を受けていないこと、代わりに商人の考え方が身についているからいう設定にして説得力を持たせた。
★読みどころ2)源八の変化
最初は自分が出世するための金儲けだったが、尊敬する殿様や町人との交流を通して、金の使い方が変わっていく。金があるということは力を持っているのに等しいが、その力は人を泣かせるために使うのではなく、人の命をつなぎ、幸せに導くために使うべきだという考え方に変わっていく。何が彼を変えたかというのが読みどころ。そして、史実にもある、上杉家に金を貸した後でその証文を破り捨てるという、爽快な場面につながっていく。
・利殖の戦の二刀流で出世した、変わり者の武士の痛快な一代記。

吉川永青『ぜにざむらい』
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