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浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』

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★内容紹介
・物語の始まりは2011年。とあるIT企業の就職試験。最終選考に残った六人の大学生に、最後の試験はグループディスカッションだと告げられる。六人でひとつのチームとして1ヶ月後に、会社が出す課題について討論する。チームワークを見せれば全員内定もあり得る。
・それを聞いた六人は何度も交流を持って互いを知り合い、想定される課題への準備を進める。すると、メンバーは皆それぞれ異なる個性を持っており、協力し合えば素晴らしいチームになりそう。六人はどんどん親しくなり、全員で内定を勝ち取ろうと努力を続けた。
・ところが直前になって、会社の人事から連絡が来る。都合により今年の採用は1名のみになったので、最終試験のディスカッションで自分たちで話し合って内定者を決めてほしいという。仲間のはずの六人がいきなりライバルになり、相談の結果、自分以外の者への投票で決めるのがいいのではということに。ところがその時、部屋の片隅からそれぞれの宛名の書かれた6通の封筒が発見される。その中には、この六人ひとりひとりの過去の悪事が書かれた告発文が入っていた。お互い、そんな人だとは思わなかったという思いと、こんな怪文書を用意した犯人は誰だという疑心暗鬼から、話し合いは混乱し……。
・果たして犯人は誰なのか。そして内定をもらうのは誰なのか?

★読みどころ1)予想を覆す構成が面白い!
この入社試験は2011年のこと。そして、入社試験の話し合いの合間に「現在」の話が挿入される。内定をもらってその会社に入社したひとり(誰かはわからない)が、社会に出て8年経つ他のメンバーをひとりずつ訪ね歩いて当時の話を聞いて回る。その時点で話をしている人は、試験に落ちたことがわかる。また、「犯人」は死んだ、という話が出てくる。そしてその聞き手が四人に話を聞いた時点で、内定したのが誰で犯人は誰かが二人にまで絞られる。──が、もちろん話はそれで終わらない。思いがけない逆転が!

★読みどころ2)人を理解するとはどういうことか、を考えさせる。
この六人は互いを尊敬しあい、とてもいい関係を築いていたのに、1通の怪文書でその信頼が崩れ去ってしまう。それまでの信頼や尊敬は、自分の経験を通して得たものなのに誰が出したかわからない、真偽もはっきりしない怪文書で揺らいでしまうのか?実はこの罠は読者に対しても仕掛けられていて、「この人はこういう人なんだな」と思いながら読んでいたら、後になってそうじゃなかったことがわかったりする。人の印象や思い込みがどれほど当てにならないかを、読者も身をもって体験する。
・二転三転する物語に驚くと同時に、人を決めつけることの危うさを感じさせてくれるミステリー。
浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』です。
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