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田中啓文『信長島の惨劇』

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★内容紹介
・時は本能寺の変が起き、山崎の合戦で明智光秀が討たれたあと。まもなく清洲会議が始まるというタイミングで、四人の戦国武将が三河湾にある小さな無人島に手紙で呼び出された。呼び出されたのは羽柴秀吉、柴田勝家、高山右近、徳川家康。不思議なことに、呼び出した手紙の主は本能寺で死んだはずの織田信長。死体は見つかっていないので、もしかして生きているのか?
・島に着くと、そこで出迎えたのは、やはり本能寺以降行方がわかっていなかった森蘭丸、黒人の侍・弥助、千宗易(のちの千利休)、そして明智光秀の娘の玉の四人。彼らもやはり信長の手紙で呼び出されたという。無人島に建てられた屋敷に通された彼らは、そこにいれば信長様が来るのだろうと思っていたのだが、なんとその夜から、ひとりずつ殺されていく。しかも当時、京都で流行っていた不気味な数え歌の歌詞をなぞるような殺され方をする。いったい犯人は誰なのか、その狙いは何なのか──?

★読みどころ1)アガサ・クリスティのパロディ。
このあらすじを聞けばすぐわかるように、これはクリスティの超有名作品『そして誰もいなくなった』のパロディ。クリスティを読んでいれば、実に細かいところまで工夫してパロディにしているのがよくわかるし、本家を知らなくても独立したミステリとして面白い。また、歴史や戦国武将に詳しくなくても、ちゃんと序盤で、信長と光秀の確執や本能寺の変が描かれるし、武将ひとりひとりの紹介もちゃんとやってくれる親切設計。

★読みどころ2)斜め上からのどんでん返し
ミステリとしてもとてもよくできているが、人によっては、ずるいと思うかも。ただポイントは、これはクリスティのパロディであるだけでなく、もうひとつ、別の有名作品のパロディでもある。最後まで読むと、「そっちだったのか!」とわかる。その上で序盤を読み返すと、そういうことか!と膝を打つ仕掛け。

★読みどころ3)荒唐無稽なのに歴史と矛盾しない構成
この武将たちが殺されたら歴史は変わっているはずなんだが、そうはならず、ちゃんと実際の歴史や言い伝えと辻褄が合うようになっている。

・遊び心いっぱいのふざけたパロディに見えて、実はたいへんな技術が使われているミステリ。

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