多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

王谷晶『ババヤガの夜』

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★内容紹介
・エキサイティングにして心に染みるバイオレンスアクション。
・主人公は新道依子、22歳。彼女は武闘派で、尋常じゃなくケンカが強い。暴力が生きがいという女性。ある日、暴力団を相手にいざこざを起こし、最初は男たちをちぎっては投げ、ちぎっては投げしていたが、多勢に無勢で、拉致されてしまう。ところがそのケンカの腕を見込まれ、その暴力団の会長の娘のボディガード兼運転手として雇われることに。
・そのお嬢さんは大学生。服装から習い事まで父親の言う通りにまったく文句を言わず従って、いずれは父の決めた相手と結婚するということを当たり前のように受け入れている。依子とは正反対の女性。
・最初はまったく話が噛み合わないふたりだったが、次第に理解を深め、友情で育んでいく。そんなとき、お嬢さんの婚約者が父と同業のヤクザで、しかもとんでもない変態だと知った依子は、ある決意をする。
★読みどころ1)ヒロインの格闘シーンのかっこよさ
バイオレン小説の、すぐに手が出るケンカの強い主人公というのは、これまで男性ばかりだった。ところが依子は完全武闘派で、しかもそのケンカのアクションシーンがとてもかっこいい。しかも依子の身体能力の描写や動き、武器の使い方などがリアルで、ケンカに強い女性というのが嘘っぽくない。ヤクザ小説に女性が出てくるときは、被害者か情婦がほとんどだったし、女性が暴力を振るうのは復讐とか敵討ちのような「理由」が必要だった。だが依子は、「だって殴るの好きだし!」みたいな感じでケンカをする。実に痛快。
★読みどころ2)依子とお嬢さんのシスターフッド小説
シスターフッドとは、女性同士の連帯、共闘を意味する言葉。お嬢さんは社会で女性が受けるさまざまな抑圧を一身に背負っている人物。女性はこうあるべきとか、男性にとってこういう女性が都合がいいとか、そういう抑圧を体現したキャラ。当然、依子が彼女を守るんだが、途中でお嬢さんにも変化がある。そこからのふたりの連帯は、ちょっと想像の斜め上を行く。
★読みどころ3)意外な展開
途中、まったく関係ない夫婦らしきふたりの話が混じる。買い物に行こうとした夫婦が交通事故の現場を目撃して救助活動をするという話。これは本筋にどうかかわるんだ?と思って読んでると……そういうこと?!というサプライズが。
・キャラクターがよくて展開が面白くて女性の悲しみと抵抗まで描かれる、最高のシスターフッド小説。

王谷晶『ババヤガの夜』
河出書房新社から税込1650円で販売中です。

 
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