多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

日野草『エターナル』

2020年11月12日(木)

カルチャー
★内容紹介
・怒涛のどんでん返しが味わえる、切ない殺し屋ミステリ。
・この物語は、「久遠(くどう)」という名前の殺し屋を中心に、彼に殺しを依頼する側の物語を連作短編の形で描いたもの。一作目は、11年前に両親と妹を交通事故で亡くした女性、咲子が主人公。小さな妹が体調を崩して、両親が急いで車で病院に向かっている途中、信号を無視して飛び出してきた車にぶつけられ、命を落とした。ぶつけた側はその場から逃げたもののすぐに逮捕。ただし未成年だったため量刑は軽かった。咲子は祖父母のもとで育てられたが、祖父が亡くなる前、遺言として「おまえの両親の車にぶつかってきた男を殺してもらうよう、殺し屋を頼んだ」と告げた。ただし本当に殺すかどうかは、今の加害者の様子を見て自分で決めろという。咲子は加害者が経営するペンションに、身分を偽ってバイトとして雇われる。加害者は結婚し、小さな子供もいて幸せそうだった。果たして咲子の決断は?
・ここで殺しを請け負ったのが久遠という殺し屋。物語はぜんぶで五話、収録されているが面白いのは、一話ごとに時代が遡る。第二話はバブル期、第三話は東京オリンピック直後の1965年、第四話は終戦の1945年。そして最終話は一気に飛んで、2040年という未来が舞台になる。そのすべてに殺し屋の久遠が登場する。実は久遠はひとりではなく、代々家業として受け継がれた殺し屋の名前。したがってすべての話に登場する久遠はすべて別の人物。
★読みどころ1)一話ごとに違った面白さ
どの話も殺し屋の依頼者の話だが、その時代ならではの社会背景が色濃く出ていて、違ったドラマが楽しめる。しかもこの著者はどんでん返しの多さに定評があって、ページをめくるごとに意外な展開、意外なひっくり返しがあり、サプライズの連続。
★読みどころ2)殺し屋自身の物語
この久遠という殺し屋が、なぜ代々殺し屋稼業を受け継いでいるのか、最も古い第四話、1945年の話で久遠誕生が語られる。殺し屋は何のためにいるのか、殺し屋を必要とする社会とはどんなものなのかを追求した、切ない物語。
・殺し屋という荒唐無稽な設定でありながら、人間のリアルが浮かび上がるミステリです。

日野草『エターナル』
実業之日本社から税込1870円で販売中です。
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