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山本一力『損料屋喜八郎始末控え』

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★内容紹介
・寛政年間の江戸・深川。主人公の喜八郎は、もともと奉行所の役人だったが、ある事件の責任を押し付けられてクビになる。その時、助けてくれたのが喜八郎の頭脳を買っている札差の米屋(よねや)。米屋は喜八郎に資金を与え、武士の身分を捨てて損料屋(庶民相手のレンタルショップ)をやってみないかと持ちかける。
・ありがたくその申し出を受けた喜八郎だったが、米屋はひとつ条件を出してきた。米屋の二代目を継ぐ息子は、はっきり言って商売の才能がない。きっと困ったことになるだろうから、もし息子が米屋を畳むようなことがあれば、できるだけ傷が浅く済むように、円満に畳めるよう手伝ってやってほしいと言われる。
・それから数年が経ち、やはり米屋は立ち行かなくなって店じまいを考える。米屋の持っている客や株(免許)をどこか他の札差に買ってもらわなくてはならないが、海千山千の札差たちはそこにつけ込んで米屋からむしり取ろうとする。そこで喜八郎の出番。権力と財力にあぐらをかいた札差たちを相手に、丁々発止の頭脳戦を繰り広げる。果たして騙されるのはどちらなのか……。
★読みどころ1)今に通じる江戸の経済の描写
札差について説明:江戸時代、武士には現金ではなく米で給料が支払われた。そこで武士は米を買い取ってもらい、現金を手に入れる。買い取るのが札差。ただ買い取るだけではなく、来年の米を担保に金を貸すということもやっており、むしろ利子で儲けるそちらがメインだった。だが武士の生活が困窮し、幕府は寛政の改革として借金をすべてなしにする「棄捐令」を出す。一時は喜んだ武士たちだったが、大きな損害を被った札差たちは強烈な貸し渋りを始める。武士には現金が入らず、札差も金を動かさないことで、市中に出回る金が減り、経済が滞り、他の商売の人たちも困っていく。金が動かず経済が縮小する様子は、コロナ禍の閉塞感に通じるものがある。
★読みどころ2)その閉塞感を吹き飛ばす痛快な逆転劇
まずこの喜八郎がキレッキレでクールですごくかっこいい。しかも二段構え、三段構えの作戦で悪徳札差に倍返しを喰らわせる。また、札差の大ボス、悪役のトップの人物に意外な一面があるなど、人間ドラマとしても読ませる。
・現在シリーズは四作目まで刊行されている。一作目から順にどうぞ。

山本一力(いちりき)さんの『損料屋喜八郎始末控え』

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