多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

吉川英梨『海蝶』

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★内容紹介
・海上保安庁の潜水士、いわゆる「海猿」の物語。
・主人公は忍海愛(おしみ・あい)という女性海上保安官。彼女は男性でも一部の選抜メンバーしか受けられない厳しい試験を突破して、海上保安庁史上初の女性潜水士となった。(実際には女性潜水士はいません)父も兄も海上保安庁で潜水士をやっているエリートで、メディアも彼女に注目。保安庁も、彼女を広告塔として、海猿ならぬ海の蝶「海蝶」と持ち上げる。
・だが実際に船に戻ると、潜水士たちは彼女とバディを組むのを嫌がる。海中で命を預け合うほどの信頼がバディには必要だが、夜を徹して語り合うことも「裸の付き合い」もできない女性とそんな関係を築けるとは思えないというのが理由。さらに着替えひとつとっても周囲に気を使わせる。同僚たちにとって女性潜水士は迷惑でしかないと、兄は大反対。父は後を継いでくれる嬉しさはあるが、危険な任務なのでやはり心配している。
・それでもわかってくれる上司とバディを組み、船が転覆したとの通報を受けて現場に向かった愛だったが、その転覆事故が思わぬ展開になって……。
★読みどころ1)海上保安庁の仕事
潜水士は映画『海猿』で一躍有名になったが、作中に「映画みたいにかっこいい人助けなんかまずない」という一文がある(続きを紹介)。決して華やかではないリアルが綴られるとともに、いざ海難事故が起きたとき、海上保安庁のどんな部署がどんな連携をとって、どんな係がどんな仕事をして、というのがつぶさに描かれる。
★読みどころ2)女性のパイオニアの苦労
本書は現実には存在しない女性潜水士という設定だが、いざ本当に誕生したらここに書かれていることが問題になるだろうと想像できる。これはどんな仕事も同じ。今、女性はさまざまな分野で活躍しているが、女性第一号として差別に耐えて実績を残し、切り開いてくれた人がいるからだということを改めて感じさせる。
★読みどころ3)海洋サスペンスとして実にエキサイティング
単なる漁船の転覆事故に思えた一件が、実は海上保安庁全体を揺るがすような大きな事件に発展する。二転三転する展開と救助場面のスリルはまさに手に汗握る。

海上保安庁全面協力により誕生した一冊。

吉川英梨『海蝶(かいちょう)』
講談社から税込1760円で販売中です。
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