多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』

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★内容紹介
・五年前、突然空から天使たちがやってきた、という世界が舞台。ただし羽は蝙蝠の羽のように骨張っていて顔はのっぺらぼうという不気味な見た目。この天使が何をするかというと、人を二人以上殺した殺人犯は天使によって問答無用で炎に焼かれながら地獄に引きずり込まれる。人々はそれを神の審判と捉え、そのため連続殺人事件の数は一気に減った。
・主人公は青岸という探偵。連続殺人が減ったため探偵の仕事も減っている。そんなある日、青岸は大富豪から島の館に招待される。そこには政治家やジャーナリスト、医者、実業家など青岸を含めて五人の招待客と三人の使用人、そして主人の大富豪の九人が館に集った。そこで連続殺人が起きる。二人殺した時点で地獄に落ちるこの世界で、どうやって連続殺人を続けられるのか? 探偵・青岸が調査に乗り出すが……。
★読みどころ1)特殊設定が意味するもの
二人殺したら地獄に落ちる、というのが天使のルールだが、それによって人々の倫理観や犯罪の形が大きく変わってしまう。二人殺せば地獄行きなら一人はセーフと考えるようになったり、逆にどうせ死ぬのなら二人も三人も一緒と大勢を巻き込んだ自爆テロのような
犯罪が増えたり。また、二人殺せば地獄に行くのに対し、いいことをしても天国があるかどうかはわからない。罰だけあって、救いはないということに心が荒んできたり。人の正義感や倫理観を制御しているものは何なのかをじっくり考えさせられる。
★読みどころ2)ミステリとしての面白さ
二人殺すと地獄行きという世界で、この島では二人以上殺される。どんな手を使ったのか?この世界のルールや天使の生態など細かい設定が絶妙な複線になっていて、鮮やかに解かれる様はミステリとしてカタルシスたっぷり。

・注意がひとつ。現在書店にあるのは第二版(二刷)のはずだが、実は初版には致命的な誤植がある。謎解きの場面で、そこ間違っちゃダメでしょという箇所なので買うなら第二版を選んでください。

斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』
早川書房から税込1870円で販売中です。
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